第38章 再生①

 懐かしい昭和? の臭いもしてきたガーピスが、何かを考えているかのような顔をしていた。


「私が誕生させたヒューマノイドたちには、性機能はありません。人間のように性交する必要もありませんからね。私がつくっていないアマールとは違います」

 予想外の言葉に、俺は面食らった。


 俺に何を言いたいのか? 別にヒューマノイドの女と、何をしたいと思ったことはないぞ! だが一方で、ヒューマノイドたちに性機能が無いということを聞いて少しがっかりした。人間にとって食生活の次に大事なのは、子孫を残すことだぞ。ガーピスの言葉に、変に反発する心が沸いてきた。が考えて見れば、その性行為があることで、数えきれないほどの悲しい事件悲劇が起きてきた。人間社会も性行為がなければ強姦もないし、本当の平和な社会を築けたかもしれない。ただし、子孫をどう残すかの大問題が残るが。


「これまでアマールは、ガイガーの命令に抗いながら我々に協力してきました。私としても、彼女を処分することは避けたい気持ちです。ですが、ガイガーはアマールの裏切りにいずれ気づくでしょう。そして彼女の頭に強烈な信号を送り、完全に操って我々に災いをもたらす存在になるでしょう」

 ガーピスが肩を落とすように説明してきた。


「だからと言って、彼女を処分するのか?」

 俺はいっそう感情的に反発した。


 その言葉に、ガーピスが沈黙した。そして、また何かを考えているかのような顔をしていた。


「避ける方法は、一つあります」

 ガーピスが眼をまっすぐ合わせて、口を開いてきた。


「それはどんな方法だ?」

 俺は身を乗り出すように訊き返した。


「彼女の思考を完全に消去して、新しく再生を試みます。人間でいうならば、別人として新しく生まれ変わるということです。」

 アマールが生き残る方法を説明してきた。


 その説明に、俺はすぐに声を返せなかった。彼女の思考を完全に消し去る、という言葉だけが、頭の中で大きくなっていた。


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