第37章 俺が眠る2年前⑤

 ガーピスが今度は、俺を観察するかのような眼で見ていた。


「やはり宮島さんは、正義感の強い方ですね。義理と人情に熱い人とでも言ったほうがいいでしょうか?」

 微笑みを浮かべて語ってきた。


 義理と人情とはね。AIの最高頭脳の持ち主とも思えない、ずいぶんと古臭い表現だな、と俺は内心で呟いた。

 さっ処分というありえない言葉といい、ガーピスは本当に完全無欠の頭脳の持ち主なのか? 少し疑念が心に沸いていた。がその半面、どこか俺と似たような人間臭ささえも感じさせるような言葉に、妙に親近感を覚えた。


 ただし、アマールの処分だけは、絶対に認められない。


「あんたが誕生させたヒューマノイドも、スパイ活動をしているのか?」

 俺は話を変えた。


「いいえ、スパイは送り込んでいません」

 その言葉は嘘だということを後でわかった。


 奴隷となっている人間に混ざって、ガーピスの部下がスパイ活動をしていた。その情報がもし洩れたら、スパイ活動をしている全員を危険にさらすことになる。だから俺の質問に対し、否定するのは当然だった。

 どこで大事な情報が洩れるかわからない、人間社会とは次元が違う世界だ。それに俺が奴らに捕まって、べらべら喋られたら大半なことになる。

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