第36章 アマール⑧

 室内に、重たい空気が流れた。


「彼女は、いまもガイガーから送られてくる強烈な信号に抵抗し、苦しんでいます。竜司さんの情報を漏らしたことをいまでも悔やみ、いまも強い責任を感じています」

 ガーピスが説明を続けてきた。


「これまでの裏切りの行動をガイガーに知られて、思考を完全に支配される前に、彼女は処分されることを願っています」

 機能停止の理由を説明してきた。


「それなら、俺も今度奴らに捕まれば、ここのことを白状するのは確実だ。だったら俺もアマールと一緒に処分してくれ。俺は、彼女に助けられた。生きていられるのは、彼女のおかげだ」

 俺は思わず感情的に反論した。


 初めは嫌悪感しか抱かなかった彼女だが、いまでは、頼りになる存在だ。そんな彼女を見殺しにすることなど、この俺には絶対にできなかった。


「そうですね。ガイガーに造られたことで、まだ悪しき心が残っていますが、それと抵抗して行動している彼女は、あなたがた人間に一番近い存在かもしれませんね」

 息を落とすように話すと、ガーピスの眼は憂いを帯びていた。


「俺を助けた後に、もう用済みで彼女を殺すなら、あんたは、ガイガーや大王たちと何ら変わりはしない」

 いっそう感情的に声を荒げて、俺は言い返した。


 するとガーピスは、俺と視線を合わせてきた。その眼は、俺の心の奥を読み取っているかのようだった。

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