第36章 アマール⑨

 周りを取り巻く重たい空気に、少し変化が起きだした。ガーピスの顔が、驚いたような表情から、元の穏やかな菩薩のような顔に戻っていた。


 それにしても、さっ処分とは、穏やかではない。常に冷静なガーピスらしくない、ある意味暴言だ。菩薩のような顔をしながら、そんな言葉を吐くかよ。まるでアホな信徒に、噓八百を吹聴し続けるオカルト宗教の教祖のようだぞと、俺は内心で批判の声を飛ばしていた。


 いったい誰が、そんな言葉をガーピスに教えたんだ? 竜司か? いや、ガーピスたちAIにすれば、俺たち人間も豚、家畜、野生動物と同じようなものかな?

 そういえば、俺もさっ処分した経験がある。もちろん豚や牛ではないが。相手は、同じ人間だった。いや、人間の面の皮を被った、鬼畜、性獣どもといったほうが、正しい表現だろう。


 俺の思考は、過去の嫌な出来事を思い出していた。

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