第36章 アマール⑦
ガーピスの話によれば、全面戦争が激しかった当時は情報が非常に錯綜していて、何が真実で何が嘘なのか情報の判別が難しく、アマールの発言も100%信じていたわけではなかった。
「もっと彼女の進言を聞いてさえいれば、あんなことにはならなかった。AI同士の情報戦争は人間社会とは比較にならないほど激化していました」
後悔の念を露わにした口調で答えてきた。
「彼女の神経回路には、まだガイガーの影響も残っています。あなたに冷やかな眼をしたのも、それが理由です。この先、彼女を通じて、この基地がガイガーに知られる可能性もないとは否定はできません。機能停止は、アマール自身も望んでいることです。もう二度と、失敗は繰り返したくない。ここにいる子供たちに、被害を負わせるわけにはいかないと」
俺はその説明を聞いていくうちに、彼女への怒りは消えていき、いまは哀れにさえ思うようになった。ガーピスの説明によると、ガイガーの命令に抵抗する度に、彼女の神経は痛みつけられるそうだ。その痛みに耐え苦しみながら俺を含め人間のために行動してきた彼女を憎むことよりも、むしろ愛おしさえ感じていた。
そんな、彼女を、用済みだからと、殺させるわけにはいかない。
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