第34章 究極のAI戦士、ゲバラという男③

 父をデモの鎮圧部隊に殺害されたジュンは、母と祖母の3人暮らしになった。弱肉強食の無法化した社会からジュンたち親子を守るため、竜司が誕生させたのがゲバラだった。


 ゲバラは、他のヒューマノイドたちとは、まったく違っていた。その外見だけではなく人間臭い言動や、行動も人間と変わらない究極のヒューマノイドだった。唯一違うのは、ほとんどの人間にある悪癖がないことだ。ヒューマノイドだと言わなければ、誰も気づくことはない。人間ではありえない超人的な行動を見せるまでは。


 過激なデモ活動に熱心なあまり、家族とは疎遠だった父と違って、ゲバラは家族を守ることを第一に行動し続けた。そんな献身的に尽くすゲバラを、ジュン少年は父親のように慕っていた。母もいつしかゲバラに、特別な感情を持つようになった。


 だが人間と、ヒューマノイドの関係だ。ゲバラは母の心を知っていたはずだが、平常心でいつものように自分たち家族を献身的に支えてくれた。


 そんなゲバラの感情が、表に出た。そうあの時だ。

 母が火星に、出発する日だ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る