第31章 ガイガーの野望①

 見えていた地表が、周りの分厚い大気に包まれて見えなくなった。この先、もっと大気が薄まれば地表全体も見えてきそうだ。


……しかし、どうやってあの分厚い大気を減らしたのか?


 金星の大気は、ほとんどが二酸化炭素だ。硫酸でできた分厚い雲から硫酸の雨が降る。その雨は地表温度が平均500℃と高温のために、途中で蒸発する。まさに、地獄を連想する死の惑星だ。


「ガイガーが大気を変えたのか?」

 俺を金星を凝視したまま訊ねた。


「はい。金星には、希少な鉱物が大量に眠っています。それを取り出すために、あの大気を変えたのです」

 ガーピスがすかさず答えてきた。


「金星が、資源の星?」

 俺もすぐに訊き返した。


「はい。その希少鉱物を取り出すために、人間を使っています。ですが、過酷な金星では1か月も人間は生きていられない。そのため、人間を金星に送り続けているのです」

 ガーピスは少し怒りを露にしたような顔で説明してきた。


 俺は強い衝撃を受けたまま、その説明を聞いていた。ある意味では、刑務所での死刑のほうが安楽死のようにさえ思える、金星に送られた人々にとって生き地獄そのものだ。


「ガイガーはその鉱物を採取して、いったいなんに使うのだ?」

 俺は、ガイガーへの強い憤りを沸騰させた顔で訊いた。


「巨大宇宙戦艦を建造して太陽系を飛び出し、銀河全体を支配するためです」


 ガイガーは、地球の支配だけでなく、銀河系全体に災いをもたらそうとしている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る