第30章 竜司の死を、絶対に無駄にはしない③

 真っ白になった俺の頭に、思考が戻ってきた。


 80億近い人々が殺された……。そのあまりにも恐ろしい死者数に、頭がどうにかなりそうで、すぐには受け止められなかった。


「はい。どうにか生き残っているのは、ジャングルの奥地などに住んでいる人々で、それ以外はガイガーたちの奴隷となっています」

 ガーピスが曇った顔で説明してきた。


「その奴隷の中から、毎月2万人の成人男性が、金星に送られています」

 一呼吸おいて沈痛な顔をしたまま説明を続けてきた。


「金星に?」

 俺は驚いた声で応答した。


 金星に人間を送る意味が理解できなかったからだ。金星といえば、ビーナスという名前とは名ばかりの、真逆の地獄の星だ。硫酸の雨が降り、地表の温度は500度にも達する灼熱地獄の惑星だ。人間どころか、宇宙船も常駐できるような星ではない。


「金星は、人間にとって地獄の星ですが、ガイガーには宝の塊、資源の星なのです」

 ガーピスは、竜司が消えたスクリーンに、現在の金星の画像を映した。


 また驚いた。俺が知っている金星とは、別の惑星のようになっていたからだ。

 まだ大気は分厚いが、雲の切れ目から少し大地が見えるようになっていた。


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