第28章 3年前⑫

 50対300の戦闘。これまでもそうだったように、地上戦ならゲバラが策を巡らせば勝利も不可能ではない。だが、空中戦ではそうはいかない。双方の激しい空中戦は、予想していた展開となった。50機以上を撃破したが、味方も10数機がやられた。単純計算でいけば、全滅するのは確実だ。


「奴らの狙いは、僕の首だ。僕が死ねば、彼らは引き揚げる」

 竜司は堰を切ったように、ユーリーに伝えた。


「え、どういうことです?」

 ユーリーが驚いた声で聞き返してきた。


「このままでは全滅だ。僕一人のために、みんなを死なせるわけにはいかない」

 声を返すと、自分を守ろうと必死に交戦している周りを見渡した。


「あなたを守るのが、僕たちの使命です」

 攻撃をかわしながら、ユーリーが声を飛ばしてきた。


「僕一人のために、これ以上の犠牲を増やすわけにはいかない。君たちの命も人間と同じ大切な命だ。人間と同じように、みんな生きる権利がある」

 竜司は、自分の思いを伝えた。


 その言葉は、地上にも伝わっていた。ガーピスはひどく青ざめた顔で、戦闘機のカメラに映る竜司の姿を、食い入るように見ていた。


 ガーピスは、シンギュラリティを超えた究極のAIヒューマノイドだ。

 竜司が、これから何をしようとするのか、すぐに理解した。




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