第29章 悲しい決断①

 竜司の姿を見ていたのは、ガーピスだけではなかった。指令室にいる誰もが画面を見ていた。みんな青ざめた顔で。


「竜司さん、お願いです。ここに戻ってください」

 ガーピスが悲痛な声で訴えた。


「いや、僕がいなくても、君がいる」

 竜司は目の前にガーピスがいるかのように、やさしく語った。


「ま、待ってください! いま、ここで死んでしまったら、あなたが一番、会いたい人、お父さんに会えなくなりますよ。それでいいんですか?」

 ガーピスは竜司の行動を懸命に止めようと、父の話を持ち出した。


 父に会えないという言葉を耳にして、竜司は少し沈黙した。


「父には、会いたい。だが自分のことよりも、ここで命がけで戦ってくれている、みんなの命のほうがもっと大事だ。後は頼む」

 口を開き、別れの言葉を吐くと、後部座席の離脱ボタンを押した。



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