第27章 俺の息子①
説明を終え一呼吸を置くと、ガーピスが改めて眼を合わせてきた。
「この続きは、ご本人に、竜司さんに語ってもらいます。私についてきてください」
ガーピスはそう言うと、すぐ隣の室に案内した。
「竜司に?」
俺は意味が呑み込めないまま、後をついていった。
案内された部屋にも大きなスクリーンがあった。そして同じように2分割で地球と火星の映像がそれぞれ映っていた。
「私は、外に出ます。そこに座っていてください」
スクリーンの正面に一つだけ備え付けてあるシートに座るよう促すと、ガーピスは出ていった。
するとドアが閉まると、ほぼ同時に照明が全て消えて、スクリーンの映像の光が室内を照らすだけになった。
いったい何が始まるのか? と思っていると、スクリーンは火星の映像が消えて地球がどんどん大きくなっていった。すると、海に囲まれた日本列島もくっきりと見えてきた。まるで宇宙から地上に降りていくかのような感じだ。
その光景に思わず引き込まれるように眺めていると、映像は沖縄本島に移動し、那覇の街並みもはっきりと見えてきたところで、焼失から見事に復元した首里城の美しい正殿の上空を超えて北上しだした。そしてしばらくすると、今度は愛しい我が家が見えてきた。
映像は、我が家の正面の地上に降りたところで静止した。俺は瞬きを忘れ、じっと眺め続けた。家族と一緒に過ごした遠い思い出が次々と蘇り、次第に俺の心は感傷的になっていった。
みんなどうしているのか? 家の中に入りたい。中の様子を見たい思いが……。
そこに子供たちが、息子と娘が家から出てきた。二人とも、まだ小学生のままだ。
俺は駆け寄って、二人を抱きしめたい思いに駆られた。
立ち上がり、思わず映像に手を伸ばそうとしたときだった。
「父さん、生き返ったんだね。良かった」
その声に反応して、振り向いた。
竜司が、柔和な顔で立っていた。だが、どこか、悲しそうにもみえた。
「なんだ、お前、生きていたのか」
ひどく驚いた顔で、歓喜の声を上げた。
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