第27章 俺の息子②

 俺は、竜司の表情より、会えたことに喜色満面の顔になった。


……ガーピスの奴、竜司は死んでいると、俺の心を散々いたぶりやがって、なんだ、息子は生きているじゃないか。俺を驚かせる演出だったのか。


 文句を少し胸に零しながら、喜びを全身に溢れさせ、竜司に声をかけようとした。

 すると、竜司が曇った顔になった。


「この姿を、見ているということは、僕は死んだんだね」

 ひどく悲しい顔をして、声を返してきた。


 その言葉に、歓喜に沸いていた心は、いっぺんに消し飛んだ。心臓をいきなりぎゅっと鷲掴みされたかのように、息ができなくなった。


「何を言っているんだ。おまえ、生きているじゃないか」

 息を取り戻した俺は、どうにか声を返し、竜司の肩を掴まえようとした。


 だが俺の右手は、掴まえるどころか、肩をすり抜けていった。


「目の前に、僕が本当に立っているように見えるけど、見ているのはVR特殊映像なんだよ。僕が死んだときのことを考えて、このメッセージをつくった」

 竜司が悲しい眼をして説明してきた。


「俺を蘇らせることができるなら、AIたちは、おまえも生き返らせられるだろう」

 納得できないという荒い口調で訊き返した。


 だが、内心ではわかっていた。無慈悲な現実を目の前に突きつけられ、俺の心が、体が、がらがらと崩れていく思いだった。


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