第26章 過去に何が起きた?①

「大谷さんを無事に救出したと、ゲバラから連絡がありました」

 交信していたガーピスの部下が報告してきた。


「宮島さん、ジュンさんを救出できました。女性も無事だそうです」

 ガーピスがほっとしたような顔で告げると、何かの指令でも出しているような眼を部下の男に送っていた。


 すると男は、すぐに機器の前に立ち操作を始めていた。ウィルスの送信だ。それは通信を傍受されないよう、かく乱するためだった。


 俺は孫が無事に助け出されたことに安堵すると、大型スクリーンに眼を移した。画面に映る火星に眼をやった。まるで周回する宇宙船から眺めているかのように、鮮明に映っていた。だが、俺が知っている火星とは、まったく違う星だ。同じなのは地形だけだ。火星表面の30%ほどは白い雲に覆われていて、赤い大地の一部には緑地帯もある。


 ジュンが説明していたことが、嘘ではなかったということだ。ということは、あそこに大勢の人間が住んでいる。


 眺めているうち、ふと疑問が浮かんできた。なぜ? AIたちは、地球の人類の文明を滅ぼしたように、火星の人間たちも滅ぼさないのだろうか?


「あの火星に住んでいる人たちは、あなたの息子さんのおかげです」

 ガーピスが横に並んで述べてきた。


「竜司のおかげ?」

 俺はびっくりした声で訊き返した。


「はい。権力者、資本家たちは、火星で餓死させようとしていましたが、竜司さんは、人々が生きていけるように火星の大改造を考案しました。いまではマスク無しでも短時間なら生活できるようになりました」

 それからガーピスは、これまで起きたことを時系列で語りだした。



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