第21章 予想外の仲間⑨

 悲しむ人間のように、暗い顔をしている二人を見ているうち、俺は、胸がハッとした。人間に造られたくせに、人類の文明を滅ぼしたAIのクソ野郎ども! と心で罵り怒声を飛ばし、AIたちに強い憎悪を抱いていた。


 アマールに対しては、マネキン女と蔑視していた。なのに、命がけで俺を守ろうとしている。それなのに、俺という奴は。いつのまにか俺自身が、大嫌いな排他、民族主義、人種差別主義の連中のような、考えをしていたことに強い嫌悪感を覚えた。


 アマールたちヒューマノイドたちも、人間や動植物たちと同じように、地球に誕生した新たな仲間なのだ、ということを初めて気づかされた。


 俺が棺桶に、冬眠に入る前もそうだった。ニュースに流れていたのは強盗、強姦殺人、振り込め詐欺だった。被災地での空き巣狙いに、暴力団の抗争、女性を性奴隷にする悪党ども、狂信的な過激者たちよりも、この二人のほうが、はるかに人間らしさを感じた。


 俺は、自分の差別心を強く恥じた。黒煙の方向に眼をやり、自分のために犠牲になったパイロットたちに、心の中で合掌した。すまないと謝り、助けてくれた感謝の気持ちを、哀悼の心をおくった。


 爆風が去ったことで飛行が安定すると、消えていく煙を背にしながら、カストロは機を急降下させた。そして地上すれすれに飛んだ。レーダーに探知されないためだ。


「あなたは、わたしたちに感情がないと思っているけど、わたしたちにも人間と同じように感情があるわ」

 少し落ち着いたところで、アマールが吐いてきた。


 その心を見透かしたような言葉に、俺には返せる言葉など思いつかなった。何かを言い出せば、きっと言い訳になってしまう。押し黙ったまま外に眼をやった。瞳に映る自然の景色だけは、人間が地球を支配していた頃と、何も変わってはいなかった。


「あの襲ってきた連中は、君たちと同じAIの仲間ではないのか? それなのに、こんな犠牲者を出してまで、どうして俺を助けるのだ?」

 俺は恥じ入る心を胸にしまい込んで、単刀直入に訊ねた。


 アリーナは煙が消えた方向を一瞥すると、眼を合わせてきた。

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