第16章 生死をかけた脱出⑥

 女の外見からは想像できないド派手な攻撃に、俺は思わず息をのんだ。ま、外見は人間の金髪美女にそっくりの姿をしているが、やはり冷徹なヒューマノイドだから、なせる業なのか?


「さあ、何を突っ立てるの! 行くわよ!」

 女に尻(ケツ)でも叩かれるように促されて、俺は我に返ったように息を吸い、足を前に動かした。


 瓦礫の直前に立つと、今度は銃口に銛のような物を女が装着した。


「あそこから、逃げるから、わたしに掴まって」

 そう言うと、女は天井にぽっかりと開いた方向に銃口を向けた。


 ブシューン! という鈍い音をたてて、天井穴に銛の先端のような弾が飛んでいった。すると放った銛にワイヤーが付いていて、するすると穴まで伸びていった。それから撃ち込んだ銛が外れないかワイヤーを強く引っ張って確かめると、女はいきなり俺の脇腹に腕を回し、穴に向かって飛ぶように向かっていった。


 すると、密着させた半身を通して、強化ゴムのように固いだろうと思っていた女の胸の柔らかい感触と、とろけるような甘美な匂いがした。本物の女でもないのに、そんなのは必要あるのか? と突っ込みを入れようと思ったが、そんなことを口にでもしたらガツンと殴られるかも、とすぐに思い直し、やっぱりやめることにした。


 本物の人間ではないとはいえ、女に殴られるのは、この俺のプライドが許さない。罵声を受けた経験は何度かあるが。


 たぶん柔らかい胸と甘美な匂いは、女の姿をしているので真似でもしているのだろう。まあ、そんなことはどうでもいいことだが、ここから無事に脱出できれば、いつか機会があれば聞いてみよう。


 ただし、ぶん殴られないように、女の拳が届かない離れた先から。

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