第9章 火星への想い②
太陽風にさらされ酸素のない、人間にとって地獄のような環境の火星が、希望の星?
俺の疑問に、大谷が話を続けてきた。
その説明によれば、俺の浅知恵で知っている火星とは、まったく違う環境になっているようだ。俺が知っている火星は、大気が希薄で平均気温が-43度と過酷な環境だ。人間がとても永住できるような星ではない。
そこで移住した人たちは、火星の巨大な死火山を次々と大噴火させた。その噴火による光景は、まるで生命が誕生する前の地球のようだった。高さが26キロもある太陽系最大の山、オリンポス火山の直径60キロの大火口は巨大な溶岩湖となり、そこから大気中に吹き上げるガスと噴煙の量だけで、地球の全ての火山の排出量の何千倍にもなった。
その噴煙の効果は絶大だった。誕生した分厚い雲が火星の大地を温め、そして雨も降るようになり、酸素も増えた。まだ大気中の酸素は人間が呼吸できるほどの量には達してはいないが、植物を屋外で植えることも可能になっていた。
いずれは酸素マスクなしで生活できる惑星になる、ということだった。だが、火星には地球のような太陽風から生命を守るバリアーがない。驚くことに、その問題も解決できたということだ。
もしそうなら、俺も火星に行ってみたい気持ちになった。
だがそれは、いまではない。地球でまだやるべきことがある。俺の家族がどうなったかを、それを調べることが最優先だ。
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