第9章 火星への想い①
「あんたは、好きにすればいい」
石田は眼を合わせて、足手まといが減った、とでも思っているかのような顔色で、俺の言葉にあっさりと応じた。
残った俺たちは棒のように立って、石田たちが逃げていった西の方角をしばらくの間、見つめていた。石田たちの後ろ姿は、あのシリアの内戦やISから逃れる難民たちを彷彿させた。違うのは、身に纏っている衣服ぐらいだ。
「彼らは、どこに行くのだ?」
俺は見つめたまま、大谷に訊ねた。
「火星に行ける船がまだ残っていて、そこに向かっています」
大谷は、石田たちが向かった方角に眼を向けたまま、心配そうな声で答えてきた。
「仮にその宇宙船に乗れたとしても、ロボットたちに見つかって撃ち落されるんじゃないのか?」
逃げた方角に眼をやったまま訊ねた。
「はい。でも地球にいれば、いずれ殺されるか、捕まってしまうでしょう。覚悟の上での行動です」
顔を合わせた大谷は、重い口調で言葉を返してきた。
「仮に、火星に行けたとしても、ここと何も変わりはないんじゃないのか?」
俺は続けて疑問をぶつけた。
「いえ、AIたちは火星にはなぜか? 興味がないようで、厳しい環境ですが、地球とは違って、人々が本来の姿で生活しています。火星は、人間の最期の希望の星なのです」
大谷は不安と期待を入り混ぜたような顔色をして、想いを馳せるかのように火星の現在の状況について説明を始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます