第4章 鳥人間①

 女は声を返さずに、観察するような眼で、俺の顔をじっと見ていた。これから女に何をされるのか? と思った、そのときだった。女が背中を撃たれ、目の前にどっと倒れた。すると、倒れた女の背中からは赤い鮮血の代わりに、中国式の線香花火のような青白い煙がもくもくと上がった。


 いきなりの惨劇に、いったい何が起きたのか? と驚いていると、目の前に巨大な怪鳥が飛んできた。いや怪鳥などではなく、大きな翼のようなものを背に着けた人間だった。その鳥人間は、あのスターウォーズを連想する、大きなゴーグルと古ぼけたヘルメットを装着していた。なので、外見からでは男か女かはわからない。まあ、胸が膨らんでいないので、たぶん男だろう。いや中には、胸がまな板のような貧乳の女もいるが。


 俺が25歳の頃に、付き合っていた女がそうだった。すごい美人だったのだが、胸部の見た目からして多分そうなんだろうと思ってはいたが、ブラジャーを外してびっくり空の玉手箱。ブラの中にあるはずの、あの柔らかいものが、なにもなかった。

 いやほんの少しだけ、平地に近い丘のようなものがあった。上着から見えるブラの膨らみは、やはり偽装していたのだ。


「僕に掴まれ!」

 予想どおり鳥人間の声は、残念ながら期待していた熟れた年増の女の、いや若い女の声ではなく、青年の声だった。

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