第2章 新しい世界⑤

 女に連れ出された場所は、施設の屋上の端から30メートルほど長く突き出た空中庭園だった。いや庭園にしては定番の? 物がない。美しい花壇やベンチも見当たらないし、奇妙な造形物があちこちに置かれているだけの、ひどく味気のない広場だった。


 その広場を一瞥した俺の眼は、すぐに外の景色に引っ張られた。瞳に大きく映る周りの光景にひどく驚いて、眼を見張った。


 いったい、ここは、どこなのか? 人間が住んでいそうな住宅やオフィスビルのような建物は一つもなく、奇抜なデザインをした大小の構造物が点在していた。中には、人間が生活するには、すこぶる不便そうな奇怪な形をした建物もある。異様な建物群を目にして別の星にいるような錯覚を覚えた。


 ひどく驚いた表情のまま頭を下げ、瞳を地上に落とした。ここから地面までは6、70メートルはありそうだ。そこでまた、眼を見張った。改めてぐるりと見渡すと、自動車、いや自転車も走れるような道がどこにも見当たらない。


 構造物の周辺は、絨毯のような芝生と綺麗に手入れされた低木の緑樹に色鮮やかな花園が、見渡す限り幾何学的に広がっているだけだった。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る