第4話 パパ、ロックオンレーザービームの時間です
交戦する一体と厖大のロボット。ラスカはさすがの機動力と殲滅力で1万ほどの敵戦力を破壊しつくしているが、次から次に襲いかかる火力が絶望の色を濃くしていく。
「まだよ!ここは討たせない!」
気を張って立ち向かうも、360度から繰り出される敵の砲撃を遂に躱しきれず、背中の飛翔装置が損傷を受けてしまった。推進力に乱れが生じ、乱回転しながら落下する。その落下する最中にも敵への攻撃を緩めることはなかった。地面で落下を待つ敵ロボットに向けて、最後の力を振り絞りレーザービームを食らわせる。爆風の中、地面に叩きつけられるラスカ。
「自爆すれば戦力を削れる?でもそうしたらパーナムが」
地面で行動不能に陥ったラスカに一斉に走り出すWalkたち。そしてそれ以外の敵戦力もラスカに照準を合わせた。
「ゼラニウムの馬鹿どもが!こっちを見ろ!!」
戦場に響き渡る声がした。敵の動きが止まり、声のした方向を確認する。
「そうだ、こっちを向け。お前らの最優先破壊対象である、介人型モデル零兵器のパーナム・パンツァーだ!」
「何で出てきたの!パーナム!」
先ほどまでラスカに向いていた攻撃対象が一気にパーナムに変わった。
「パパってのは、娘のピンチに手を差し伸べるものなんだ!」
敵全勢力からの砲撃がパーナムの目の前に浴びせられた。眩しい攻撃の中パーナムは、笑った。そしてすべての攻撃をまともに受け、その体はバラバラに飛び散る。
「あああぁぁ!!パーナム!!!」
ラスカの叫びも虚しく、バラバラになったパーナムは機能を停止していた。その様子を確認し、敵の攻撃対象は再度ラスカへと向けられる。
「パーナム。パーナム、、、パーナム」
呻くように何度もその憎たらしかった名前を呼ぶ。もはや飛んでくる敵の攻撃は関係なかった。ただ悲しかった。
「死なないでよパパァーー!!!!」
次の瞬間、バラバラに散らばっていたパーナムの体が再起動し、高速でラスカの元に集まり光学バリアを張った。
「え?」
「やっと大きい声で呼んでくれたなあ、ラスカにゃん!」
バリアに守られたラスカの周囲をグルグル回るパーナムの体。頭部は完全に木っ端微塵になっているのものの、体のどこかに仕込んであるスピーカーから話しかけてくる。
「死んでなかったの?パーナム!」
「パパってのは、娘がピンチなら何度でも生き返るのさ。さあラスカにゃん、あの言葉を言ってくれ」
「・・・嫌よ、とは言ってられない状況ね、パーナム」
「そうだ、今がその時だ」
バリアが解除されると同時に力強く立ち上がるラスカ。そしてその体が金色に光り出す。パーナムの体がそれに呼応するようにラスカの右腕に集まり、合体していく。すべてのエネルギーが右腕に収束するその姿は、まるで太陽のように光り輝いた。
「パパ、ロックオンレーザービームの時間です!!」
右腕が展開し、充填されたエネルギーが夥しい数の自動追尾レーザービームとなり発射された。敵の数約4万、それらはものの数秒で消し飛んでしまった。
荒野と化した戦場に立つラスカ。右腕に残るパーナムの残骸は、ぷすぷすと黒い煙を上げながらもどこか誇らしげに輝きを放っていた。
「ありがとう、パパ・・・」
ラスカはいつまでも、いつまでもその右腕を愛おしく見つめるのだった。
パパ、ロックオンレーザービームの時間です▄︻┻┳═一 一ノ瀬 水々 @amebrain
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