一 胎動
ガラス越しに射す西日は、室内を焼くような熱気で照らしつけていた。
まだ夏には早いというのに、この暑さは気候のタガが外れたのか、自分の頭がおかしくなったのかのどちらかだった。床に突っ伏している顔から、汗が滴り落ちる。タイルに落ちてまばらに広がる水滴の粒が見える。暑さとは別に鼻に付くのは、人間の臭気、複数人が寄り集まった時に出来る特有の男の臭気だった。体臭は元より、身に付けている香水の匂い、口から垂れ流している煙草の匂いといった臭気が混合され、狭い空間の中で熱気を浴びせ続けられた挙句、吐き気を覚えるような悪臭となる。冷房は備え付けられているが、寿命が来ているのかガタガタと振動音を鳴らし続けている。その中で、身体を土下座の姿勢に折り曲げたまま、異様な熱気と臭気に包まれて、頭の芯が焼け爛れていく。
最早、頭で渦巻き続ける言葉は<<暑い>>などという程度のものではなかった。
「おい、聞いてるのか?」
そう言って目の前に立つ男は、曝け出している手の甲を靴で、捻じるように踏みつけた。
気が狂いそうだ、と思う。
「いちいち不手際をやらかすくらいなら、殺し屋なんて要らないんだよ」
「はい、わかっています」
「わかってねぇから言ってるんだ。標的の男と、連れの女! 死体の確認までセットだ、アイリスよ」
「自分のミスです」
アイリスは、言われるがままに応じてはいるが、目先は床に固定されたままで、自分に唾を浴びせる男、想田正倫に対しては向けていなかった。この男は他人を詰る時に、自らの嗜虐癖を見せつける節がある。そんな趣味に付き合うつもりもなければ、そんな男に屈服している状況もアイリスにはただひたすらに不快だった。想田の背後に控えている連中の好奇の目が向けられているのがわかる。それを承知で衆目に晒しているのだ。
「もうその辺にしとけ。今から確認に行かせろ」
奥から、組長の投げやりな声が響いた。パチン、と爪を切る音が続く。想田はアイリスの手に押し付けている靴裏を離した。
「いいんですか? こいつ、これで三回目ですよ、前は――」
「どうせ死んでんだろ、いちいち気にする程のことでもない」
アイリスは、なおも顔を伏せたまま、微動だにしていない。頭は停止したままだったが、代わりに冷房の異音がガタガタ、ガタガタと脳内で反響していた。一応納得したらしい想田は「だそうだ、分かったら行け」とアイリスに指示を出す。
「はい」と返事をし、アイリスはようやく身体を起こした。顔にかかった髪をかき上げる。肩下まで伸びているブロンドは、踏みつけられて荒れ放題だった。照り付く日光の眩しさに眼を細める。
事務所にあしらえてある調度品を横切り、出口まで向かいながら、背中に纏わりつく視線を感じた。想田の侮蔑と嫌悪が混じったものと、他の男連中の、自分に向ける欲情した、舐めるような眼。嗤い声がした。誰が最初に発したかはわからないが、周囲に伝搬し、見送るように鼓膜に響かせている。
気が狂いそうだ。
*
想田正倫は、鬱陶しく照らし続ける陽光に辟易しながら、長身で金髪を長ったらしく伸ばしている女の背中を見送った。革張りのソファに腰を下ろし、手慰みに煙草を一本取り出して口に咥える。ライターを点け、ふと、なんの冗談だ、と思う。自分の様なやくざ者がたむろする事務所の中に一つだけ混じる、異人。しかも女。そんな女は殺し屋で、自分達は暗殺という厄介事を任せ、搾取しているという現実が今更ながら馬鹿馬鹿しかった。
自分が男である認識を、あの女を前にすると意識させられるはめに陥る。体の作りが、堅さが、柔らかさが全く異なる異物。それが自分より殺人に最適化されている事実がある。想田は煙を吐いて、またいつもの思考を巡らせていることに気付き、嫌気がした。
威圧を発する身体に任せて、恫喝と暴力を繰り出した後に尾を引くように付き纏うのは、不毛と虚無だった。それを行っている内は、頭も身体も跳ねる時があるのだが、終わった後はひたすらに脱力する。それが近頃の想田の悩みと言えば悩みだった。同時に何を今更感傷めいた気分に浸っているのか、十代の頃から身を置いている世界に懐疑も後悔も遅すぎるほどに遅すぎるのであって、だからどうした、と結論付ける。身を任せてみる嗜虐の快感も、事が終われば霧散するに過ぎず、三十を超えた肉体に新たな感慨をもたらすには程遠かった。
どちらかと言えば本意は自らの為ではなく、嗜虐を眺める連中――身内の男達に見せるものという意識が大きかった。腐っても美貌の女を辱め、見世物にし、肴にする。そういう行為を共にする時に立ち上って来る隠微な連帯感を、想田は敏感に感じ取っていた。相手が女だから、異物であるからという理由でそれを排他することで生まれる意識。欲望を共有する繋がり。想田は、その時間の時に過ぎる昂揚が嫌いではなかった。なにがしかの達成を待ちわびて期待する時間。自らの新たな相貌が露出する予感。
「しかし、あの女も懲りないもんですよね」
一寸放心している隙に耳に入って来たのは、年の割に少し高い、男の声だった。
「兄貴もたまったもんじゃないですよ。いくら叱りつけても駄目なんだから」
播間仁人。学校を追い出され、以来道を下るところまで下った結果、自分が拾い上げた舎弟だった。坊主頭の下に青白い肌。まだ野球少年のような純朴さを残している癖に、日光に照らされた顔つきはいつも以上に光って見えた。一張羅として他と同じくスーツを着込んでいるものの、杓子定規に当てはめた結果、肉体の若さが未だ勝っている稚気を滾らせている。確か今年で二十歳。その声に他の舎弟連中が同意する。
「毎回調教する方の身にもなってみやがれってんだよ」「しかし、殺しの腕は確かだ。ガキの頃から育て上げた手前、切り捨てる訳にもいかん」「確か、なのは殺しの方だけじゃないだろ、下だよ、下。あの身体は殺人機械にしておくには勿体無い」「そんな事言って奴の目の前にお前のブツ転がしてみろ。噛みちぎられるんじゃないか」「あんな首輪付けられた雌犬にか? 噛みちぎるならやってみろってんだ。その前に入れりゃこっちのもんだよ」
ゲラゲラと笑い声が響く。こいつらの猥談にも飽き飽きしているが、止めろと言って止める連中ではない。そんな中で、こちらをちらりと覗き見る眼がある。いよいよ慣れていたが、案の定ではあった。
仁人は、時に同性愛者らしいそぶりを見せることがあり、想田に対してのみ伝わるサインを投げつけてくる。特に、先程のようなストリップまがいを演じてみせた時が顕著だった。仁人が興奮し、身を固くさせているのはアイリスに対してではなく、想田に対してだった。想田は自らに注がれる欲望を感じながら、アイリスを、女を、時には男を詰って見せる。誰にも気付かれない、二人だけの口には出さない隠微なコミュニケーションがそこにはあった。想田はその気になるつもりも無かったが、それでも仁人の期待に対しては何故か半ば投げやりに答えてやっているのだった。
とはいえ考え出すと俺は何をやっているんだと自問することがしばしあり、仁人の眼に対しても嫌悪する部分がある。控えている仁人の方を見やると、ニッと笑って、体を小刻みに貧乏揺すりをしながら、歓喜のリズムを取っている。その態度には明らかな悦びがあり、通常の関係性とは異なる感情があった。
想田は顔を背け、やめろ、そんな顔をして俺を見つめるんじゃない、と当惑半分、唾棄半分にしてその場はやり過ごした。
奥に陣取っている組長は、なおも黒光りする机に裸足を乗せて爪を切っている。隣に控える若頭、恩地は相変わらずの能面で突っ立っていた。そのどこか弛緩した空間の様を見やって、想田は紫煙を天井に燻らせてみる。
*
眼に広がる海は、清々としながらもどこか黒みを帯びた紺碧だった。示し合わせたように頭上の空までが真っ青であり、視界に広がる風景は地平線まで青に染まっていた。アイリスは思う。この視界が青いのは自らの碧眼を通して見るからではないか、と。
断崖の上は、昨夜の黒々とむしろ澄み渡った空気とは打って変わって、太陽の光が覆う、一面が白飛びしたような世界になっていた。吹き付けた風を全身で浴び、長髪を翻らせながら、尖端へ足を向ける。
目を左右に走らせ、死体の有無を確認する。だが既に波にさらわれ、どこかへ流されていったであろうそれが発見できるとも思わなかった。どうせ無駄骨を見越しての再来であり、更なる追求は免れ得ない。あの時は連れの女はまだしも男まで仕損じる可能性があったのだから止むを得なかった。しかしこの高さだ、どちらとも死んでいるのは明白。しかし連中は死体の確認を神経質に問い詰めてくる。状況が状況でした、などと言い訳が通用する相手でもなし。故に意味を喪失しているのであり、アイリスはただ単にこの場所が気に入っているから来ているというだけに過ぎなかった。
そうして漠然と紺碧を見やっていると、ふと無秩序に乱立する岩礁の中に、赤い色が見えた。ここから海面までは相当な距離があり、目視が可能なのはアイリスの卓抜した視力があってこそだったが、それを持ってしてもアイリスは一瞬、暑さにやられた見間違いかと疑ってみたものだった。眼を凝らすと、岩肌に点けられた赤は人間のシルエットのようであり、恐らくは女の方だと思った。男の着衣は赤では無かったはずだ。それにしても、青と岩肌の茶の中に落ちている赤は、偶然付着した割に存在を主張し続けるシミのようだった。
アイリスは考える。さて、死んでいるのか、いないのか。あれは血の赤か。考えるまでもない。ふーっ、と息を吐いた。そして着用している黒いスーツとスラックスも脱がずに、昨日の二人と同じように遥か断崖の上から海面へと身を投げ出す。
空中に落下しながら留まり、重力に引っ張られ続けるのは刹那にも永遠にも感じられるような実態のない感覚だった。やがて着水の衝撃が残るままに、身体が水中の奥へ奥へと落ちていく。アイリスは動じもせずに、手と足を使って上昇していった。海面から顔を上げて呼吸をすると、全身に空気が回るのを実感すると同時に、冷たい、などと当たり前のことを思った。陽は相変わらずだが、地上の熱帯とは異なり、海水は低温を維持し続けている。そういえば喉が渇いていたことを思い出し、少し口に含んでみる。
周囲を探ると、上から確認した位置に、果たして赤はあった。岩礁の中の一つに、衣服のどこかを引っ掛けてわずかに揺れている。近づいてみると、やはり女だった。男は見当たらない。シルエットを形作っている体型は小柄だった。こんな年端もいかなそうな女と、どこにでもいそうなチンピラが情死を企んだというのか。
間近に迫り、顔を覗き込む。瞬間、アイリスの脳髄に電流が走るように、しまい込んでいた或る記憶が色を付けて鮮明に蘇った。
妹。名前も知らずどのような関係だったかもわからず、しかし姿形だけは憶えている、妹。何処かの場所で、気紛れな阻害の手によって自分と生涯引き裂かれた、妹。この女は妹に似ている。そのような考えを頭が自動的に弾き出していたが、アイリスは動揺した。
まず、自分の記憶にある妹はまだ少女で、片手で数えられる年齢だったはずだ。この女は少なくとも二十は過ぎているように思われた。髪色も妹は自分と同じ地毛のブロンドで、この女は金色は金色でも、明らかに人工的に染め上げた金髪だった。決定的なのは、人種が違う。つまり根本的な部分で差異があるのであり、似ているも似ていないも印象以上のものではないはずだった。
アイリスの中にある妹の姿は、別れて以来汚れ続けた己の中に存在する唯一の聖域のようなものだった。未だ世界の実像を知らないままだった、在りし日の自分。対して汚濁され続け、今後永遠に腐食していく現在の自分。その二つは、同一人物であって同一人物でない、別の人間だと信じ、証拠としてあるのが記憶にあるアイリスにとっての妹なのだった。
だとすれば目の前にいる女は現在の反映だと言えた。殺し屋として追った男と心中した女。殆ど自分が殺したと言ってもいい女。今の今まですっかり忘れていたはずの殺人に対する生理的嫌悪が背筋を這い上がり、悪寒がした。自分の心に秘めた汚しがたいものを裏切り、犯してきた証拠のように、自らが血で汚した女は四肢をぶらり、ぶらりと海中で揺らしている。そのように過去と現在が交錯することがアイリスには耐えられなかった。罪を告発されているようで、まさかこの女はその為に自分の前に姿を現したとでも言うのか。アイリスはむせかえるような不快に吐きそうになりながら、それでも女を観察し続けた。
推察される年齢の割には幼い顔だと言えた。健康的に焼けた肌に目と鼻と口が小奇麗に配置されており、どこか少女の様にも見える。対照的に服装はいかにも水商売らしい真っ赤なワンピースを着けており、そのコントラストが記憶の妹との決定的な違いを指し示しながら、嫌悪とはまた別の場所でアイリスの神経をざわつかせ続けるのだった。伸びて揺らめいている手足は、握れば折れてしまいそうなほどに細い。
すると、色あせた唇から、すぅ、と息を吐く音が聞こえた。生きている。通常なら死んでいるはずの状態で、息をしている。
アイリスは女の肩を担いだ。思いのほか重かった。そしてそのまま浜辺の方へ泳いでいく。
浜辺の砂の上に女を横たわらせると、やはり息をしているのが分かった。その隣にアイリスは腰を下ろす。
極小の砂粒は、濡れた身体に纏わり付いてくるが、構わなかった。見渡す限りの海から、波音が乱れ一つない間隔で聞こえてくる。
生存の見込みがあるのか、ないのかわからないような女を覗きながら、アイリスは心中から湧き出してくる笑いを抑えることが出来なかった。仕留め損ねた死にぞこないを自作自演で救助し、あまつさえ無事まで願っている。理由は、自らの記憶の中にある遠すぎて幻影に近いとすら言える妹との近似。全く普段の自分からは考えられない程の滑稽さ、惨めさであり、確固たる理由も無いままの愚行に、ただ身をよじらせて笑うしかなかった。こんな馬鹿げた真似も暑さのせいだと思ってみながら、しかしアイリスは茫然と思い起こしてもみるのだった。
<<異質>>。自分が故郷を離れてここに来てから片時も離れることなく、伴侶のように付き添う感覚。肌の色が違う。眼の色が違う。髪の色が違う。死体の山を積み上げて血で染まった人非人は人間とは違う。男だらけの組織の中で性別が違う。連中が向ける視線の汚らしさ、気持ち悪さ、寝る時の発情した身体。外見上だけではなく、秘めた胸の内に対する理解者が世界のどこにも存在しないどこまでも寄る辺の無い感覚。
それらを全てひっくるめた総体としての<<異質>>であり、まるでトランプの中で一枚だけ存在するババのようだと思いながら、故に組織の切り札であり続けるのだった。その<<異質>>を感じ取ったからこそ、この女を助けたのだろうか。
本来なら命を落とし、この世と縁を切るはずの局面で助かり、愛する情夫に先立たれたこの女も自分と同じ、あるべきところに存在していない異質の存在なのか。同情か、憐憫か、それとも見当違いの仲間意識かと自虐してみても、今のところ、この女をどうしたいのかアイリス自身さっぱり見当が付かなかった。
そうして無意識にまた女の顔を見ていると、変化が起こった。女の瞼が、凝視していなければわからないような微細さでピク、と動く。アイリスは息をのんだ。
やがてゆっくりと眼が見開かれると、瞳が左右を緩慢に振れる。少しずつ、ゆっくりと女は自ら身体を起こした。隣でこちらを見ているアイリスに、ぼんやりと焦点を合わせると、第一声を発する。
「……誰?」
想像するより低い声音だった。地の底から聞こえてくるような呻き声。状況のせいもあるだろうが、アイリスはてっきり妹と同じような、どこまでも透き通った変声など知る由もない声かと思っていたのに、などと考えたが、すぐに忘れて答えた。
「ただの通りすがり。貴女があそこに引っかかっていたから、助けた」と、岩礁の方向を指差す。
当然に連想されるだろう数々の違和との辻褄合わせは放り投げていた。適当に言い繕っても意味が無いと考えたのだった。女はそれを聞いたのか聞こえていなかったのか、間を置いて声を大きくした。
「……もう一人いなかった? 近くに、あたしの連れなんだけど、男」と果実のように丸い眼をキョロキョロさせて言う。
「いなかった。貴女が一人だけ」
女はなおも周囲を探っていたが、次第に肩を落とし、顔を影で隠した。微動だにせず、固まる。
アイリスは、自分と男を撃った当人を眼前にして絶望している女を見やって、少したじろいだ。このままいつまでもうなだれて顔を上げずにいるか、それとも推理を働かせてこちらを糾弾してくるか、どちらとも判断出来なかった。
しかし、女はアイリスの予想に反してずっと早く前を向いた。こちらを見据える顔に涙はない。意識を取り戻して輪郭をはっきりさせると、まだ少女の面影を残す垢抜けない相貌の中にある瞼を上げた眼が際立って鋭く、意思の強さを感じさせる刃物に変化するのをアイリスは見た。
女はアイリスの近くににじり寄って来た。すると返答も待たず、身体に手を伸ばしてべたべたと触ってくる。アイリスはとっさに反応出来ずなすがままだった。答えに迷っているアイリスをよそに女はあるものに触れた。それは常に携帯している拳銃だった。服の上からでも形がわかるそれを女は取り上げると、日の光に翳して眺める。海に飛び込んだまま濡れそぼっていたが、問題なく発射可能な本物の銃だった。
女は角度を変えて眺めながら、アイリスに問う。
「これ、本物よね。弾も入ってるみたいだし……」
「……なんで持ってるのかは訊かないの」
アイリスは唖然として尋ねる。いきなり距離を詰めて来たのもそうだが、何故実銃を見ても動じないのか。男がチラつかせでもしたのだろうか。
言外の疑問に答えるように、女は応じた。「だいたいわかるわよ。あんた、殺し屋さんでしょ。雰囲気がそうだもの。だから拳銃持ってるのも当たり前」
こいつは、私が犯人だと理解していないのか。それとも昨夜は髪を束ねていて気付かなかったのか。そんなことがあるとも思えなかったが、落下のショックで頭がイカれたのか。
「悪いけど、あんたには復讐に加担してもらうわ。乗りかかった船って言うでしょ、あんたはさしずめ救助船ってところ。報酬はないけれど、協力しないと適当なところにあんたをチクる」
そう一方的に宣言して、女は立ち上がった。そして拳銃の撃鉄を起こして、地平線に向かって構えてみせる。
こいつは気違いだ。話に脈絡がなさすぎる。殺し屋だと分かったって? 救助船だって? 今からこの女の銃を取り上げて殺すことは容易だった。だが、拳銃を構える女の横顔を見上げると、固まって動けなかった。細い身体に着けた赤いワンピースを翻らせて、女は立っている。金色の髪はまだ乾いておらず、艶やかに光っていた。空からの日光は、手中に収まっている黒い銃身に向かって一点に射しているように見えた。
女は引き金を引いた。爆発音が響き、銃弾があらぬ方向へ飛んでいく。アイリスはその音に心臓を射抜かれた気がした。目が覚めるような、鮮烈な衝撃。普段日常的に接する発砲の音とは明らかに別のものだった。アイリスはしばし激痛とも恍惚とも付かぬ余韻に浸った。身体が熱い。濡れて纏わりつくスーツの黒地が陽で焼け付く鬱陶しさではない。脳髄から掻き回されるような熱さだった。波の音はもう聞こえなかった。
女はこちらに向き直り、手を差し伸べる。
「あたしは川末愛純。あんたは? 名乗りたくないなら名乗らなくても良いけど」
「……アイリス」
アイリスは愛純の手を握る。心臓に食い込んだ爪はまだ痛みを発し続けていた。
*
アイリスは男に電話をかけた。知っている顔の中で唯一頼れると言ってもいい男だった。
恩地広和。組のナンバー2に当たる若頭で、アイリスの面倒を幼い頃から見続けている、言わば教育係だった。だがアイリスが成長した今となってはせいぜい連絡係に過ぎず、親密な関係などでは決してない。両親の顔も知らないアイリスにとっては親代わりの存在ではあったが、娘を血染めにする男が果たして親と形容できるかは疑問だった。言葉や銃の扱い方や格闘術を教えようが、嬲られ犯された事実を知ろうが全く表情を変えない。そこに愛情など存在するはずもなく、出会ってから二十年を優に超えて頭には白髪が混じり能面にはますます磨きがかかる。その朴訥と従順で身を固め、組織に一切の疑問を差し挟まない不能の極みがアイリスにとっての恩地という男なのだった。
端末に耳を当てると、数秒経って「例の女はどうした、アイリス」という恩地の声が聞こえてきた。この男は相対するといちいち名前を呼称してくるが、その図々しさに毎回腹が立つのだとアイリスは不快を育てる一方で、名付け親は確かこの男だったかと思い出してみる。
「今、どこにいる?」
「外に出ている。明日には戻ると思うが、どうした?」
「報告。女の死亡と次の仕事の確認」
「その程度なら電話で十分だろう」
「直接会って話したいの」
返答が途切れた。どうせ横にいる組長に是非を尋ねでもしているのだろう。その光景を目に浮かべながら苛々していると声が返る。
「……わかった。明日事務所に来い」
アイリスはそれを聞くと電話をこちらから切った。多少の横暴は恩地に対してのみ許容される。どうしようもない年月の成せる業だった。しかし、一体私は何をしようというのか。義理を裏切る罪悪感が微塵もないのは現実感の有無なのか、否か。
*
車内はエンジンを止めた結果、順当に蒸し風呂と化しつつあり、既に外より耐え難い熱気を湛えていた。
アイリスはフロントガラス越しに斜め前方を見やった。そこには愛純が乗っている軽自動車が停めてある。事務所を構えるビルの地下駐車場は、外気から切断され、昼も夜も傍目にはわからない薄暗さを作り出していた。
手筈としては、通用口である地下駐車場で待ち構えて現れた組長を狙うという、計画性も何もない不確実なものだった。愛純は監視カメラの死角を縫って、点在する駐車された車の一つに紛れており、アイリスは曰く監視、保険の役割を言い渡されて、愛純の車から更に離れて状況を窺っている。恩地が告げた出戻る時刻までにはまだ余裕があり、待機の為に中途半端に浮いた時間の中で、アイリスは乗り付けたシートに身を預けて暑さを感じながら、何故かぼんやりとしていた。
結局、自らの動機が不鮮明なまま事を進めてしまっていた。愛純が言い渡した科白は到底脅迫とすら呼べない代物であることに変わりは無く、ではここにいて、いともあっさりと反逆を企てているのは誰だ。「あんたは、そこにいて」忠犬じゃあるまいし、そこにいろと言われて人生を棒に振るほどの女だったのか、私は。いや、失調の原因は川末愛純というあの女しか有り得ないとアイリスは考える。銃が発射された時に生じた熱さは、あの女の体温なのだ、と。未だ残る稚気の中に芽生えている色に射すくめられたのだ。赤いワンピースから伸びるその細い肢体を思い描くと、感触を味わいたい、自らの肌で浸蝕してしまいたいという具体的な欲望すら形を成しつつあった。そういう夢想を育みながら愛純が居る方向を見ても、並ぶ柱と車体に遮られて正確な像が掴めない。制御不能の欲望に溺れると、周りの男共と一体何が違うのかとヒステリックな笑いが噴き出し、詮無い自虐を繰り返すのだった。妹の姿が着々と遠ざかることにも無自覚なまま、自分の正体を確認し続けた。
不意に車の走行音が彼方から聞こえて来た。時間から考えて間違いなく組長を乗せた車。アイリスは頭を切り替えて神経を集中させる。やがてヘッドライトの軌跡が映ると、薄暗さの中に局所的な光線が放たれ、周囲もわずかに明るくなる。図体のある黒光りする車体は、事務所で組長が腰掛ける机と同じ色をしていた。やがてゆっくりと振れて、淀みなく定位置に停車される。アイリスから見て左斜め前方。右にいる愛純の車とはちょうど対角線を描くような位置関係にある。
その図を注視していると、愛純が車から出て来た。着の身着のまま、死にかけた時と同じ姿。そのみすぼらしさはアイリスから見て痛々しさとしてしか映らず、しかし連中に同情を引く必要などなく引かれるはずもない。彼氏を殺された怨念をそのまま保持した赤い死に装束。足に引っ掛けたサンダルで相手に近づいていく。
流石に訝った様子で運転していた組員が顔を出した。
「誰だお前」
素っ気ない返事に愛純は淡々と告げた。
「あたし、ここにいたカズヤの彼女です。組長さん、そこにいるんですよね?」
「お前、カズヤの連れか? ……んだよ、生きてるじゃねーか」組員は合点の後に悪態をつき、車内の組長に判断を仰いだようだった。
不気味な沈黙が流れる。すると乗り込んでいた一同がぞろぞろ降りて来た。組長、恩地、運転手、他数名の組員。そして組長が愛純の方へ歩み寄った。
「カズヤの女か、どうした? 分かってると思うがあいつは死んだ……いやあんたがこうしてここにいるのを見ると、わからんか。すまないなぁ、何せウチの飼い犬の出来が悪くてな、生憎殺し損ねたようで」
口調も態度もやたらと明朗であり、それがアイリスを逆に不安にさせた。何をするつもりだ。対して愛純は静かに言う。
「どういう事ですか」
「そのままの意味だよ。あいつが組の金を盗んで逃げやがったから殺す事にした……あんたの様子を見ると、やっぱり死んだんだろうな」組長は顎髭をポリポリと掻きながら面倒臭そうに喋る。
「死にました」
その一声を聞いて、いかにも申し訳なさそうな詫びの顔を作って見せながら「そうか、あんただけ助かっちまった訳だな。でも、良かっただろ? あんなろくでなしの甲斐性なしと付き合ってもロクなことにならない。さっさと新しい男でも作って忘れることだ」と組長は言った。
「なぁ、そうだよな?」と脇に控える組員に振ると、「ええ、今時あんな根性なしも珍しいですよ、手前のしのぎでにっちもさっちも行かなくなって挙句の果てに二束三文掴んで逃げた屑。しかも金は落として女を取った。生かしておいてもしょうがない」と冷酷に切り捨てた。その組員はなおもまくし立て「でも女をコマすのは上手い野郎だった。大方この女もその一人でしょう」と愛純を見ながら下卑た笑いを覗かせる。聞いた組長は「そうか、なぁ、どうだった野郎の具合は? そんなに大事なら拓本にでも取っておいたか?」といきなり大声を上げて笑い出す。その形相は、遠方から見たアイリスには悪鬼の禍々しいものとして映った。
途端、愛純の手が懐に伸びた。
抜き取った拳銃を組長に向けて構え、「あんたら全員ぶっ殺しに来た!」と啖呵を切る。だが、遅かった。
愛純が引き金に指を掛ける前に、空間に一閃が走る。その線に沿って鮮血が噴き出し、悲鳴が上がった。アイリスが瞬時に目を走らせると、組長の手に光るものがある。使い慣れた短刀が血を浴びて光っていた。
「馬鹿な男に寄って来るのは馬鹿な女ばかりなり、ってか」と苦悶の声を上げてしゃがみ込む愛純を見下ろして組長は告げた。
「この商売やってるとな、こっちに向かってくる奴の狙いなんて簡単に分かるんだよ。そんなオモチャで俺のタマ取れるとでも思ったか?」足元に転がる拳銃を蹴っ飛ばすと、腰を下ろして愛純の前髪を掴みあげた。
血に染まった顔面の惨状を見ながら、「こりゃ、もう見えないな」と堅いコンクリートの床に放り投げた。愛純は殺す、殺すと言いながら手をじたばたさせて空を切るが、塵一つ掴めない。組長は組員に「おい、チャカ貸せ」と言った。「恨むなら、カズヤを恨むんだな」
その光景をただ見守っていたアイリスは、堰を切ったように飛び出していくしかなかった。このままでは確実に愛純は殺される。しかし、出ていったところでどうにかなる手立ても思いつかず、自分でも覚えが無い切実さで駆けて、銃を手にした組長の前に立った。
「待ってください、この女がここにいるのは私の不始末です。責任を取らせてください」と連中に言い放った。対する組長は好奇を邪魔された不満と怪訝の顔を作り、恩地は普段の能面をやや崩してこちらを見た。構うものか。自分の声音が自分でないような震えを発していることに、連中は気付いていないようだった。
「お前、何でここにいるんだよ。恩地に死んだとか言ったそうだな。責任? お前ら、まさかグルじゃないだろうな」組長は拳銃を愛純に突き付けたまま言う。
アイリスは「私の責任です。こんな女、わざわざ殺さなくてもいい」ちらりと負傷した箇所を抑えて呻く愛純を見たが、顔は窺い知れなかった。
突っ立って傍観している組員に近づいて「刃物、貸してください」と言うと、そいつは困惑して組長を見たが、「貸してやれ」の一言で自身が収めている短刀をアイリスに差し出した。それを受け取ると床に座り込み、短刀の質素な鞘を抜いて、切っ先を冷たいコンクリートに付けた右の手の平の小指に差し当てる。
アイリスは一息吐くと、思い切り刃を振り落として小指を切断した。瞬時に耐えがたい激痛が全身に走り、思わず顔を歪めたが、悶絶して転げ回る暇はない。ピンク色の鮮やかな肉を見せる切断面からぼたぼたと血が溢れる。汗が噴き出すのを感じながら、左手を何とか動かして、今の今まで自分の小指だった肉塊を拾い上げた。
出来るだけ平常を保ちながら、組長にそれを差し出す。
「これで、十分ですか?」
組長はそれを受け取らずに顔をしかめたままだったが、効果はあったようで拳銃を降ろした。今の自分の立ち振る舞いを客観視することは最早不可能だったが、思考を吹き飛ばす苦痛の中で異人の小指などそうそうお目にかかれるものでもないだろう、と馬鹿げた啖呵が脳裏を翳めた。
だが、捧げた供物は大して視界にも入れられなかった。組長は興を削がれたように「今日日そんなもん渡されてもどうしようもねぇよ。ただ今回はそれで許す、次は無いからな」とさっさと顔を背けて「行くぞ」と組員連中に指示を出した。
動物園の珍獣を見るような眼をアイリスに向けたまま、付き従って連中は上階の事務所の方へと去っていく。その中に恩地がこちらを覗き見る眼もあったが、もうどうでも良かった。
痛みで朦朧とする頭のままに眼下を見ると、灰色の地面に広がっていく自らの赤い血が微妙な凹凸に沿って形を作っていた。それは歪な波紋のようにあらぬ先へ向かうと、傍らで同じように身体を折っている愛純から流れ続ける血溜まりと混じる。アイリスはその様子を見て、奇妙な形容し難い結合に身悶えした。愛純のワンピースの色も赤、赤、赤。赤を彩るのは頭髪のくすんだ色合いのまま輝く金であり、アイリスの網膜でしばらく赤と金が明滅していた。
「……立てる?」と愛純に問うてみたが返事は無い。先に助かった時とはまた別の、破綻した事態に対処する方法を失ってしまったと言わんばかりだった。このまま地に伏し続けてもいられない。そう無言のまま語る姿にアイリスは断固とした拒絶を感じる一方で、安堵のような感情を覚えた。彼女を助けたことはなし崩しなどではなく、何か決定的な変容がもたらした必然だった。だからここで捨て置く選択肢は頭の隅にすら無く、連中をこのままにしておくものかといった復讐心もずっと溜め込んできた不快も鬱屈も絶望も、彼女の前では後景に退くか、動機を後押しするものに変容したか、だった。
アイリスが愛純に手を伸ばして身体を支えると、「……畜生」と呪詛が漏れ聞こえた。表面には出さずに頷きながら、何とか監視をかいくぐり出口まで歩ませる。その重さを思いながら、そうだ、これが慈愛なのだと気付き、アイリスは顔をほころばせた。
*
恩地広和はかつて感じたことのない、茫洋とした感覚に囚われていた。想定できた可能性かも知れなかったが、実際に我が身に降りかかるとひたすらに所在が無く、焦燥にまで至る現実感も希薄だった。
アイリスが逃げた。殺し損ねた女と一緒に組織を裏切ったのだ。絶後の理不尽を受けてもそれを実行しなかったのは、端的に実現不可だったからであり、そこまで馬鹿だとも思っていないし育てた覚えもない。いや、かつて二、三度あったのはまだ幼かったからで、その度に恩地自ら手を引き引き連れ戻したのだったが、今は違う。金髪と碧眼をたたえた人形のように壊れやすい娘は立派な殺し屋へと成長した。成長した、と思っている以上に実績がそれを証明している。もう子供ではないのだ。
第一、逃げた先に何が待っているというのか。ロクな当てもなく彷徨って死ぬのは既に確定している。自分で手を掛けた女と連れ立っているのも恩地にとっては全く意味不明であり、先日耳にした投げかけられた素っ気ない声を思い出しても変化は思い至らないのだった。
親、と形容するほど上等だとも思っていなかったが、あの組織にあって際立つ異貌が自身にとってなにがしかの拠り所だったのも否定出来なかった。絶対服従を金科玉条にして理不尽を耐え凌ぎ、若頭にまで昇り詰めても得られなかった安息と充実の時間がアイリスとの間にはあったと恩地は考える。彼女自身がどのように受け止めたのかはわからないとしても、どんな汚辱も環境から要請される必然のもので、俺を責め立てるにしても限度がある、と。自分なりに精一杯尽くした結果は出したのだから文句を言われる筋合いはない。恩地はそのようにして自覚と無自覚を入れ替えて言い訳を重ねてみるが、口数の少ない不器用な在り方が自己を守る術として働いていたのは事実だ、とも思った。まともに話しても意味が無いのではなく、糾弾されたらどうしようもないという恐怖。
そこまで思い詰めたが得るものがある訳でもなく、事務所があるビルの傍らで、恩地は再びアイリスの端末に電話を掛ける。裏切りの原因を真っ先に疑われるのは自分なのだからたまったものではない。呼び出し音を聞きながら、無駄ならば出張ってあらかた探し回るしかないと思った、その時だった。
「裏切り者、見ーっけ」
聞き覚えのある声がしたかと思うと、頭部に強烈な衝撃を受け、恩地は意識を失った。
*
「ねェ、歳いくつ?」
閉店間際のフェミリーレストランは、既に閑散としていた。時間が時間なのもそうだが、何より立地が悪い。都市部から離れた道路沿いに立ち並ぶ同系統の店は、近辺の区画には密集するように立ち並んでおり、半端な競合の結果としてブランド力とイメージが芳しくない店の順に客が遠のいていくという構図だった。単純に料理の味から接客態度まで、理由は色々ある。
レジに立っている店員が欠伸を漏らして早々に店じまいの雰囲気が漂う店内で、隅のボックス席では男と学生と思われる女二人がテーブルを挟んで話し込んでいた。
男はいかにも道端ですれ違った縁からのナンパが見え見えの軽薄そうな面構えであり、女学生二人組の方はといえば片方は黒い長髪を腰に届くほどまで伸ばし、どこかお嬢様めいた気品を漂わせているが、手に端末をひたすらに弄っている姿はどこにでもありふれた佇まいではあった。もう片方は頭をおかっぱにした眼鏡で、背は長髪より高い。耳にはイヤホン。どちらも学生服。
場末の深夜のファミリーレストランにおいては何ら違和感が無い光景で、誰も気に留める者はいなかった。
「歳くらい答えてくれてもいいじゃない。さっきから何回も訊いてんだからさ。それとも先に連絡先?」男は目の前の女学生二人が液晶やら音楽やらに眼と耳をやっているのにも構わず、べらべらと喋り通している。最中、男の手がおかっぱのイヤホンに向かって伸びかけた。
「聞いてん――」とまで男の口は動いた。が、その先の言葉が紡がれることはなかった。
男が最後に見たのは、長髪の手元から自分の脳天に向かって伸びる銃口の残像になった。余りにも唐突な異常事態に感知も疑問を差し挟む余地すら無く、男は額を撃ち抜かれて息絶えた。
長髪は死体を一つ作っても意に介す様子はなく、銃口に装着された細長い消音装置を取り外して、懐にしまった。鈍いくぐもった音が店内に一瞬響いたが、驚いた素振りを見せる者など誰もいなかった。レジの店員が、また一つ欠伸を漏らす。
長髪が手にしている端末がバイブレーションで震えた。即座に応答すると、「了解」と一言だけ発して電話を切る。長髪はソファに身を預けたまま、眠っているのか死んでいるのかすら曖昧な死体から眼を逸らし、おかっぱの方へ声をかけた。
「行くわよ、百合子」
おかっぱの方は既にイヤホンを両耳から外し、長髪の方を見ていた。その眼は、羨望とも欲情とも付かないものを滲ませて、潤んでいる。
「はい。一美」名前を呼んで、立ち上がった一美の方へそそくさと付いて、店を出る。
二人がこれから向かう先は組織の事務所で、電話で受けた内容は逃亡した殺し屋を抹消してほしい、というものだった。その実二人も殺し屋で、しかも成功率と容赦の無さと異常性から高名な存在なのだが、外見から内に秘めた資質に気付く者はいない。
右京一美と左京百合子。標的を始末するまで確実に追い詰め殺す、猟犬の如き殺人機械であるカップルの出来だった。
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