五歳児がコインを落とすと、そのコインは必ず、側溝の蓋の穴を目指す

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五歳児がコインを落とすと、そのコインは必ず、側溝の蓋の穴を目指す・・・

 今年のある春の日、ふと思い出したことが在る。

 いや、ふと思い出したわけではなく、実はいつも何かにつけ心の何処かにモヤっとした感覚はあるのだが、普段は深く考えないことであり、自らの『経験則』とでも言おうか、何か行動を起こす時に必ず湧き起こるあまり心地の宜しくない不安感、そして焦燥感であったりする事柄だ。


 その日の僕は、大学の講義のあと、何の気なしに立ち寄った大学生協の書籍コーナーで、同じ専門教室の岩下サヤカとバッタリ出会った。

「やあ、君も今日の講義で教授が話していた本を探しに来たの?」

 本当は、僕は何の気なしに寄っただけの生協だったので、特に本を探しに来たわけではなかった。ただ、書籍コーナーを見掛けた時、午前中の講義で教授が言っていた書籍のことを思い出し、ちょっと興味があって店員に訊いていたのだった。

 サヤカが本棚に向かって目を凝らしているところへ、いきなり僕の方から話し掛けたので、彼女は少し驚いた様な表情をしている。

「あ、高山君。ええ、そうなの。ひょっとして高山君も?」

「ああ。そのつもりだったけど、今お店の人に訊いたら、今日あった三冊とも、もう売れちゃったって。ちょっと来るのが遅かったみたいだね、俺達」

 サヤカとは国文学専攻の同じ専門教室とはいえ、あまり喋ったことはない。特にこれといった理由がある訳ではないのだが、彼女はどちらかというとおとなしい感じの女の子で、大概の場合、自分から話すより、他人の話を聞いてばかりいるイメージだった。

 決して影が薄いという訳ではないのだが(現に、僕もちゃんとフルネームで彼女のことを認識している。サヤカの漢字までは知らないけれど)、大人しすぎて、彼女が何に興味を持ち、どんなことを考えているのか分からないので、話し掛ける切っ掛けが掴めなかった。

 僕はと言えば、恐らく男にしては少し喋り過ぎなくらいお喋りなのだろうが、それでも話し掛けられたら、そこからはよく喋るだけで、話し掛けられなければ、それはそれで黙っていることも大して苦痛ではない性質たちではある。(男同士なら話は別だ)

 特に国文学専攻の学生なんていうのは八割が女性であり、そんな中で、こちらから無理に話題を持ち込んでその輪の中に入って行こうとすること自体が、飛んで火に入る・・・なんとやら、なのだ。

 だから、サヤカに『やあ』と言ったところまでは通常の挨拶なのだが、その先、彼女との会話を試みるような流れを、自ら作っていることが、自分でもよく頑張った方だと思う。

 話し掛ける切っ掛けは、同じ本を探しに来ていたことと、お互いに出足が遅く、それを買い逃してしまったこと、この二つで充分だった。

 実はそれくらい彼女との会話の切っ掛けが今まで無かったし、それくらいのことでも彼女と話をしてみたい、僕はそう思っていた。

 要は、僕は彼女にずっと片思いをしていた、ってことだ。

 そんなことはサヤカは恐らく、全く気付いていないであろうことは、まぁ、残念ながら、僕が一番分かってはいた。

「そっかぁ、もう売れちゃったんだね。残念。お昼休みに来ればよかった」

 サヤカの全くと言って良いほど僕の気持ちには無関心であろう返答に、可笑しな清々しささえ感じる。

「ところでさ、このあと、暇?」

「えっ、どうして?」

 僕の一大決心の誘いの言葉に、彼女が何の警戒心も無く『どうして?』と言って寄越すのには、流石に少し気持ちが萎えそうになるのだが、ここは押し続けるしかない。

「あ、うん、いや、ただ何となく、暇かなぁって思って・・・。俺、暇だからさ、岩下さんの時間があれば、一緒にお茶でもどうかなぁ、なんて・・・。あ、忙しいなら良いんだよ、無理しなくって」

 サヤカは不思議そうな表情で僕を見ていたが、ふと、自分の腕時計に目を遣り、こう答える。

「そうね・・・、午後七時に家庭教師のアルバイト入ってるから、これから五時くらいまでなら、大丈夫だよ」

 僕も慌てて腕時計を確認する。

 現在、午後二時四十七分。

 与えられた時間は二時間とちょっと。

 ここで初めて僕は『しまった』と、後悔にも似た感覚に捕らわれた。

 こんなにあっさりOKを出されてしまったのでは、何の準備もしていない僕の方が焦ってしまうのだ。

 本当は、今日のところはどんな口実でも良いので、一旦は『ごめん、今日はこの後忙しいの』と断って貰えた方が、実は僕にとっては有難かったりする。

 そうしたならば、『じゃあ、また今度。今度、絶対ね』と、やや冗談気味に、それでもある程度強引に約束を取り付け、そして、それまでの時間を会話のネタ準備だったり、彼女が好きそうなもののリサーチだったりに充てることが出来るからだ。

 ぶっちゃけると、それくらい僕は彼女に興味があるし、殆ど話したこともないくせに、勝手に彼女のことを好きになっていた。

 だからこそ、安易な誘いを掛けて、ここで失敗する訳にはいかない、そういう思いが、僕の胸に瞬時に湧き上がって来てしまったのである。

 何ともバカバカしい思考回路なのは、自分でも充分に理解しているつもりだが、これは恐らく生まれ持った性格だ。直しようがない。

 不味いなぁ、さっきの本の話だって、ただ何となく思い出したから店員に訊いてみただけであって、実際のところはして興味がある訳ではないのだ。

 しかも、真面目な文学談議になっても僕は困ってしまう。

 僕は文学部に在籍しているとはいえ、実は全く以て文学の知識が無い。では何故この学部に入ったかというと、それも何となくだ。

 そもそも大学生になっている自分が、今でも信じられない。

 高校を卒業したら、そのまま地方公務員の試験を受けるか、若しくは専門学校で経理関係の資格でも取ろうかと思っていたのに、高校時代の担任に騙されて大学受験をさせられたと、今でも思っている。

 僕にとって、高校の成績なんていうものは、内申点さえ良ければ、実際の科目の試験の点数なんてどうでも良かった。ただ、進学校の教職員の方々としては、毎年何人の国公立大学、有名私立大学の合格者を出すか、それこそが彼らの業績であり、飯の種だったり、遣り甲斐だったのかも知れない。

 それにしたってやはり、僕にとってはどうでも良いことだった筈なのだが、まんまと担任の口車に乗せられて、大学受験をし、大学生になってしまっていた。しかも、文学科国文学専攻なんて、国語教師以外は全く潰しの効かない学科の、である。

 他の学部、学科を受験するという選択肢もあるには在った。ただ、二次試験の科目が小論文と面接のみという、最も安易なものだったことが、僕がこの大学、この専攻を選んだ理由でもあったのだ。

 取り敢えず担任の言う通り、国立大学に合格すればそれで良い、ただそんな感じだった。

 それで担任が納得し、両親が安心してくれるのならば、ってことだ。

 そんな経緯でこの大学の国文学専攻の学生になってしまった僕なので、当然、意思や興味、そして将来の希望を持って入学してきた他の学生たちとは明らかに違いがあった。

 入学当初はひょっとして大差は無かったのかもしれないが、大学生生活が三年目ともなると、やはりその差は歴然なのだ。

 簡単に言うと、僕が太宰を読み、中原を読んでも、ただ「好き」とか「嫌い」とかにしかならないのだが、周りの同級生は既に、「何故」とか「だから」、更には「表現法」とか「文章の構成」や「時代背景」なんてことを、平気な顔をして話しているのだ。

 文学史も同じだ。誰のどの作品が後世の何処にどのような影響を与えたかなんて、全く興味のない僕にとって、そのことについて語り合う連中の言葉は、まるで外国語のようにしか聞こえない。

 教授の解説に至っては、もう既に人類の言語とも思えないくらいちんぷんかんぷんで、単なる『音』でしかないのだ。

 そんな中、今日の講義では、たまたま少しだけ僕の興味を惹く話が出て来た。

 僕が最近読んだ作家の処女作の話を、専門教室の教授がしたのだった。

 教室を出て、次の講義に向かう最中には、もうすっかりそんなことは忘れていたのだが、ふと立ち寄った学生生協の書籍棚を見て、ああ、そう言えば、くらいの感じで思い出し、そしてそこには、俺が思いを寄せる岩下サヤカが居たという訳だ。

 さて、どうしたものか。

 玉砕覚悟で構わず前進か、それとも一時撤退して戦略の練り直しか・・・。しかし、相手に伝わっていないにしても(恐らく本気で伝わっていないだろう・・・残念ながら)、宣戦布告を既に行った状態だ。

 今更退く訳には・・・。

「どうしたの?」

 くそっ、『どうして?』の次は『どうしたの?』と来たか・・・。

 どうしたもこうしたも、こちらの気持ちも知らないで・・・。知る訳ないか・・・。

「ああっ」

 僕が素っ頓狂に叫ぶので、サヤカは驚いて息を飲む。そして、もう一度サヤカに『どうしたの?』と言われる前に、こちらが先に切り出した。

「俺、今日、このあと四時からバイトだっ。あれ?今日って水曜だよね?」

「え、ええ、水曜日、だけど・・・」

「ごめん、直ぐ帰ってバイトの準備して行かなくちゃ。じゃ、またっ」

「え、あ、うん・・・」

 僕はサヤカをその場に残し、小走りに駐輪場に向かった。

 今日、水曜日は、アルバイト先のカフェバーの鍵開け当番で、僕が行かなけりゃ、店が開かない。午後四時に解錠して、午後六時のオープンまでに、店の掃除と仕込をやらないとならないし、後二人出勤予定のアルバイトスタッフは鍵を持っていない。

 不意に思い出し、慌ててしまったせいで、サヤカとの次の約束もし忘れた。

 確か俺が『・・・じゃ、また』って言った後、サヤカは『・・・うん』って答えたよな?

 そこで落ち着いて、『うん、じゃ、今度絶対に誘うから』と、念押ししとけば良かったのでは?

 やっちまった・・・。

 バイクのエンジンを掛け、それを反転させると、後ろ髪引かれる思いで僕は一気にアクセルを開いた。



 週明け月曜日の午前中の講義終了後、今日の講義で岩下サヤカと一緒になることは無いのだが、何処か学内でバッタリ出会ったりしないものかと、邪な期待を胸に適当にブラブラと学内を散策していると、ちょうど来客者用の駐車場の方へ向かうサヤカの後ろ姿を見掛けた。

 少し距離があったので、僕はちょっとばかり速足で彼女に追いつこうと歩みを進めたが、先に行くサヤカの姿が建物の陰に隠れて見えなくなる。

 僕も駐車場の手前まで辿り着き、次にサヤカの姿を捉えた時、彼女は一台のどう見ても新車と思しきスポーツタイプの乗用車の助手席に、ちょうど乗り込もうとしているところだった。

 その車の持ち主で、運転してきたであろう若い男も、運転席側のドアを開け、車の天井越しに、助手席に乗り込むサヤカを笑顔で見守っている様子だ。

 一瞬その男は、運転席に乗り込む前に、ぐるっと辺りを見渡すような素振りを見せ、その時、僕と一瞬目が合って、彼がニヤリと笑ったように感じられた。

 僕は慌てて目を逸らしたし、踵を返して、今出て来た建物の陰に隠れもした。

 本当にその男と目が合ったのか、そして彼が本当に笑っていたのかは、実際のところは分からない。僕の思い過ごしかも知れない。

 僕は隠れた建物の壁に背中でもたれながら、煙草を一本取り出して、それに火を点けた。

 吐き出すと直ぐに風にかき消される煙を眺めながら、ふと、思い出したのだ。


 そういえば・・・


 五歳児がコインを落とすと、そのコインは必ず、側溝の蓋の穴を目指す・・・


 ◇

 おばあちゃんに貰った100円玉を握りしめて、僕は駄菓子屋に向かう。

 うまい棒コーンポタージュ味、チロルチョコ、あんずジャムに棒カステラ、それから…

 五歳児の僕にとっては、それ以上のワクワク感は考えられない。

 頭の中は空想で一杯で、いつもは怖い近所の犬の吠える声も、目の前に立ちはだかる大きな小学生にも、お構い無しに駄菓子屋に向かって突き進むのだった。

 そして、悲劇は起こる。

 五歳児の癖に、その心の内を(ニヤけた顔を)すれ違う大人達(小学生のお兄さん、お姉さんも含めて)に気付かれないよう、半分地面を向いて先を急ぐ僕は、目の前に迫る電信柱に気付かずに…

「あっ」

 本当に声が出たのかどうかは分からない。

 しかし、その瞬間、確実に覚えているのは、転んで手を付いたと同時に、今の今まで握り締めていた掌から地面に放り出された100円玉が、まるでスローモーションの様に、音もなくスーっと転がり続け、向かうその先は、信じられないくらい大きく口を開いた、側溝の蓋の穴…。

「あっ、あぁ…」

 これも声になったどうかは分からない。

 転んで地面にうつ伏せにへばり付いたまま、五歳児は、コインの行方を追い続ける…

 何の躊躇もなく穴を目指して転がり続けるコイン…、そしてそれを見続けることしか出来ない、僕は、五歳児…

「あ~あ…」

 今度は確実に声に出してそう言って、立ち上がり、膝小僧を払う。

 本当は泣き叫んで「痛いぃ」とか「100円玉ぁ」とか言いたいのだ。誰かに聞いて欲しいのだ。

 だけれど、僕は側溝の蓋の穴を暫し見詰めて、もう一度「あ~あ」と口ずさむように呟いて、それから踵を返して家に帰った。

 そのあと恐らく三日間くらいは、僕は、家の中でおばあちゃんに会うのを、極力避けていたと思う。


 あの日の「あ~あ」な気分、何も出来なかった自分、それが妙に可愛らしくもあり、それでいて情けなくもあり…

 ◇


 思い出した時、何がどうしたというわけでもない。

 ただ、何故だか「頑張ろう」って、気になった。

 ◇

 其から何故だか、僕は卒業迄の間、何思うでもなく、ひたすら学業に打ち込んだ。

 本当に意味もなく、だ。

 そして、本当に、卒業後の就職には、何の意味ももたらさなかった。

 卒業論文でも、同期の中でも二人だけの「AAA」の評価まで受けたにも拘わらず。


 でも、だからどうした?




「ありがとっ」

「ん?なんで?」

「だって、そんなに貴方が私のこと想ってくれてたなんて、その当時は全っ然、知らなかったんだもの」

「ああ、そういうことか。それなら、俺の方こそ、ありがとう」

「え、どうして?」

 この『どうして?』は、良い『どうして?』に聞こえる。

「だってさ、今ここに居てくれるからさぁ、何ていうか・・・。言わせんなよ。俺だって恥ずかしいんだぜ」

「だって、言わせたいんだもん。意地悪してるんだよ、私」

 そう言ってクスクス笑う佐弥香に、僕も笑顔で答える。

「でもさ、子どもの頃って、側溝にコインを落としちゃったら、そのまま泣き寝入りするしかなかったよね。今ならさ、何とかして取り出すけどね。君のことも取り出したしさ」

 言っていて自分でも恥ずかしくなるのだけれど、佐弥香に言わされているので仕方がない。だけど、気分は悪くない。

「きゃぁ、聞いてるこっちが恥ずかしい」

「君が言わせたんだ・・・」

 少しムッとした表情を作りはしたが、僕は微塵も怒っていないのだ。

「あ、そういえばね、うちのお兄ちゃんなんだけど、多分全く気付いてなかったはずよ。そんな話、したこと無いし、この前貴方が家に挨拶に来てくれた時も、全くの初対面と思ってたみたいだしね。それに、私も偉くない?ジッと

 そう、あの時の若い男というのは、佐弥香の3コ上のお兄さんで、たまたま休暇で帰省していて、午前中で講義の終わった佐弥香を迎えに来ていただけだった。

 それにしても、学生時代、岩下サヤカが、こんなに僕と気が合うお喋りな佐弥香だとは思わなかった。


 大学を卒業して二年後、お互い全く違う業界に就職していたにも拘らず(彼女は公立の図書館司書、僕はアルバイト先にそのまま正社員として就職)、彼女が僕の勤めるお店に顔を出したのだった。

 僕はその日の内に、帰り際の佐弥香を捕まえて(僕はまだ勤務中だったので、本来それは全くもってルール違反で最低の行為だったのだが)、自分の携帯電話番号を渡し、彼女の電話番号も無理矢理聞き出した。

 ん、今、佐弥香は何て言った?『側溝の中で待ってた』?・・・おや?・・・偶然?

「ねぇ、今迄俺、勘違いしてたかもしれないけど・・・。ひょっとして、君があの日、うちの店に現れたのって・・・」

 佐弥香は更に意地悪そうな笑みを瞳に浮かべ、

「それは、ナイショ」

 そう言って誤魔化そうとした。

 僕も敢てそれを追及はしない。誤魔化されたままの方が心地好さそうだし・・・。


 街に灯が点り始めた五月の夕方六時前。

 明後日に迫った佐弥香と僕の結婚式前の、独身最後のデートの帰り道。駅から彼女の実家まで歩きながらの思い出話に、通りがかった児童公園の前で、僕は、ふと、足を止めた。

 そして徐に財布から五百円玉を取り出し、それを佐弥香に無言で手渡す。

 一瞬何が起こったかと目を見開いた佐弥香だったが、直ぐにそれを理解して、「じゃ、いくよ」、そう言って、その五百円玉をアスファルトの地面に転がした。

 コインは見事に転がり、その行くへを追う二人の視線と、同時に発した声。

「あっ!」

「えっ?」

 コロコロと転がる五百円玉は、一直線に側溝の穴を目指して進み・・・。

 そして、穴の手前で、音もなくパタンと倒れて・・・止まった。

 互いに目を合わせて僕等二人は、可笑しくなって、クスクス笑い、それでも堪えきれずに、あはははっ、と、声まで上げて笑い出した。

「あーびっくりした」

「ほんと、やめてくれる、そういうの」

「貴方がやらせたのよ」

「そっか、そっか」

 僕は五百円玉を拾いながら、ワザとらしく胸を撫で下ろすポーズをして見せる。

「良かったね、俺たち、もう五歳児ではないらしい」

「でも、結構怪しかったわよね」

 また可笑しくなって、笑いが止まらない二人だったが、佐弥香がちょっと真面目な顔をして言うのだ。

「でも大丈夫。もう絶対に落ちないし、それでも万が一落としたら、絶対に拾ってね。私、また、絶対に待ってるから・・・」

「・・・『また』って・・・」

 僕が財布をポケットに仕舞おうとゴソゴソやっているのを尻目に、それ以上何も言わずに先に歩き始めてしまった佐弥香を、僕は追いかけた。

 目の前に浮かび始めた月が、やたらと大きく、眩しかった。





     おしまい

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