エピローグ
【僕】
神様は最後に、こう加えて言った。
「でもな。この条件に当てはまらない人も中には居るそうだ。非常に稀だけどな…。天国の者が現実世界に行った時、現実世界の人を大事にし、勇気づけ、幸せにし…現実世界でそういう行為をされた者が、強く強くその人の事を想っているなら…わしらにもどうしようも出来ないんじゃ。現実世界の人の記憶を消すと言う事は決して簡単な事ではないからな。貴方の妹、そして家族が貴方を想う気持ちは想像以上に大きすぎた。要するに、貴方がそれだけ現実世界の人を勇気付け、親切にし、幸せにしたという事だ。よって、またこの天国で生きる事が出来るようになったのだろう。幸運だったの。お帰りなさい。」
そう言う神様はどこか誇らしげだった。
僕もその話を聞いた時胸が温かく、熱くなっていくのが自分でも分かった。こんな感情、初めてだった。
妹…家族… 。
お母さんがこの世に僕を生んでくれた事に本当に感謝の気持ちでいっぱいだった──。
そうして僕はこれからも天国で僕の家族をずっと、温かく見守ろうと決心したのだった。
あと100年もすればもう一度、僕の家族や
*
【私】
その後…私はお兄ちゃんと出会ってから変わった。
もちろん、直ぐに、とはいかなかったけど。
この引っ込み思案な性格も、自分から話しかける事も、どれも自分にとってすごく難しい事だった。
だけど、もうお兄ちゃんに心配されるもんか!って思って、まずは友達作りを頑張った。
とりあえず、勇気を出して、1言目、だ。
おはようでも、いい天気だねでも、楽しいねでも、…。とりあえず 何か。
───行動しなければ何も変われない。
大学に入学して、そう思っていた私は
「おはよう」と、いつも隣の席に座っていた男性に話しかけた。
「おはよう!」
その男性は笑顔で返してくれた。
その後講義が始まったが、その時私は心がどんどん晴れていくかのように清々しく感じられた。こんな感情、初めてだった。
お昼休憩の時、今度は男性から
「お昼、一緒に食べない?」
と、誘ってくれて。私の心は踊るようにクルクルダンスしていて。心から嬉しかった。
空に大きく七色の橋がかかっているのが見えた。初めてだった。
*
その後分かった話だが、その男性はいつも隣に座る私の事を気にかけてくれていたらしい。
そして私と同じく、自分から話しかける事が出来ない性格、と明かしてくれた。
私たちは直ぐに打ち解け、大学生活を共にし、付き合って7年が経った時私たちは結婚した。
そして2人の間に子供を授かった。
赤ちゃんが生まれた後、分かったことは少し障害を持つ子という事だった。
だけど、私は全く悲しまなかった。
本当に、その子が居るだけで心から幸せで。
生まれてきてくれてありがとう、心からそう思う程愛おしかった。
お兄ちゃんから褒めてもらった私の優しさ。
自分の長所をどんどん伸ばして、沢山の人に優しさを届けて生きる。それが私のモットー。
障害が持つ人が不自由だって誰が決めるのって。多分お兄ちゃんならそう言ってくれるだろう。障害があるなんて関係ない。足が不自由でも、目が見えなくても、耳が聞こえなくても。
こんないじめられっ子だった私も、今ではいじめっ子よりもずっと幸せに生きてるって自信がある。
──私たちの子供は世界一可愛くて、愛おしくて、自慢の子だって声を大にして言いたい。
そして「誰だって輝けるんだよ。」
そう、世界に叫びたい。
空は今日も蒼く優しく私たちを見守ってくれていた。
お兄ちゃん、今、私 幸せだよ。
お兄ちゃんに出逢う前よりもずっとずっと。
幸せになったよ。
だからもう、安心してね。
ーENDー
幸せになったよ。だからもう、安心してね。 くるみ @kobayu_
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