第44話 松本楓(まー吉)の憂鬱⑤ byみしゅなん
今回の作戦の目的は
鈴木四郎に花束を渡して
その花束に仕込んだ盗聴器を使い
有益な情報を得ることだと
皆には言ったけれど
真意はそうではなくて
それらはむしろ
最低限度【必須タスク】でしかなく
本当の狙いは
誰にも言うことなく
そう
私だけで
こっそりと進めていた。
では
こっそりとは何か・・・
になるけれど
それは
ネチネチと
回りくどい事はせず
公言同様に
ターゲットへ据えていた鈴木四郎に対して
架空の人物である
【小野寺檸檬(まー吉)】を
接近させて
マインドコントロールを施して貰い
それで
操り人形になった彼(鈴木四郎)を
早期解決に向けて
利用しようというものなのだ。
【噂は噂で対抗する】
もっと嚙み砕くと
鈴木四郎に【檸檬】を会わせ
惚れさせて骨抜きにし
私達(夢や春奈)とは
古くからの知り合いだという
近しい関係を匂わす様な設定や
こちらにだけ都合の良い情報
【濡れ衣を着せられただけの無害な存在etc】を
彼(鈴木四郎)を通して
敵対している人物達へ吹き込んで貰い
何も問題など無かったかのように
書き換えてしまうのが
密かにやろうとしていた
実際の作戦だった。
【色恋の中で男は無力】
ここで
『何故春奈ではなくマー吉なのか』って事を
疑問に思うだろうけど
その理由は2つ
1つは信憑性の問題。
当事者の春奈を使ってしまうと
鈴木四郎にも敵対者からも
身構えられて
逆に説得されてしまう心配。
それが突然現れた部外者からの発言だとしたら
より真実味が増して
信じ易いというオチ。
2つ目は簡単・・・。
ただ単に
安藤春奈に
断られただけの話。
「そんな奴ら放っとけばいいんよ」と春奈。
まぁ確かに
恨まれてるだけで
手を出して来なければ
わざわざ此方側が
干渉する必要なぞ無いと
私も直ぐに思ったんだけど・・ね
春奈と同様に。
なんだけど・・・ね
だけど
一人だけ
そうはさせてくれない方がおられまして・・。
それは
田嶋夢なんだけど・・・ね。
もうね
夢が
「ヤバいヤバい」とか言っちゃって
無駄に煽ってくるものだから
回避不可になってしまって・・・。
結局
マー吉を使わざるを得なくなってしまった
って感じなのよ。
そんでもって
作戦を否定した春奈に
実行しているのがバレない為にも
皆には真意は告げられずに
私だけが実行する・・って
そんな感じ。
何かあったんかなぁ?
んー
やっぱ
匠絡みかぁ?
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残念ながらとでも言うべきなのか
それとも
当然なのか
どのような事象にも
厄介事は付き物で
案の定
この作戦にもそれは存在した。
というのも
自身で集めた情報によって
それは判明したのだけれど
何と!
鈴木四郎は
【全く女性には興味が無い】らしいのだ。
えー
じゃあ何で安藤春奈を追い掛け回すの? って話に
なるんだけれど・・・・。
念のためにもう一度
同性愛ルートも含めて
再調査をしたんだけどね
けど
やっぱり
結果は同じで
認めざるを得なくなり
私の作戦は
何とも奇妙な現象で
先っけから
頓挫してしまった。
情報を疑うつもりは無いのだけれど
やっぱり
春奈を好きだと公言しているのだから
信じ難いんだよねぇ・・・。
安直に
只の【隠れムッツリ】
かもしれんのに・・・・。
もう簡潔明瞭な
【どエロイおねー様】投入してみるか!
って
いやいや
そんな分かり易い罠に
あいつが引っ掛かるのかな?
ワンチャンありそうな
予感はするんだけどな・・・。
でも
もし
本当に
女性に興味が無いんだったら
全然意味ねーしなー。
ああ
どうしようか・・・。
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長い事考えたけど(1日位)・・・
もう考えるのを止めて
行き当たりバッタリの
総当たり戦で行くことに決めた。
マー吉のスキルを信じて
世の男性が好む定番に
安藤春奈の性格をブレンドした
数パターンの釣れそうな女子を
ひたすら
ぶち込んでみることにした。
【完全なりきりのコスプレ女王】
流石の奴も
どれかには興味沸くんじゃね?
って
超投げやりな戦法。
無論男装も準備している。
もうそれしか思いつかん。
更に
ヤツ(鈴木四郎)にこれらを連続投入すると
流石にバレそうな気がしたから
近しい人らとの
交互での干渉をするのが適切だと推測して
その候補もピックアップした。
先ずは母親だよね。
近所の人数人も有り。
クラスメイトもだよね・・って
ばか!
クラスメートはターゲットの一つだから
駄目っしょ!。
後は・・・
兄弟は居ないから
まぁ
そんなとこかなぁ。
ということで
母親と
両隣の家の人2人の
計4人
この人達で
ガンガン回して行く事に決めた。
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イロコイものの特徴には
一目惚れか
長期に渡って【好き】を植え付けてゆく育み型の
ザックリだけど
二択しか無いと思っていて
育む方は
言わずと知れた長丁場で
いつになるかなど
予測できない代物。
失敗か成功かのジャッジも不明瞭で
しつこく攻めてしまうと
直ぐに犯罪者扱いされてしまう危険がある。
それに反して
一目惚れの方は
パッション頼りにはなるけれど
白黒がハッキリとしていて
始まれば
一瞬で結果が出る。
だから今回の作戦は
当然ながら
【一目惚れ作戦】を選択した。
マー吉には本当に悪いと思っている
学校を休んで迄もしてもらう訳だから・・。
?
あれれ
何パターンも投入しても
不発だったら
長期戦になるよね?
どの位掛かるんだろ?
これ
やんない方がいいんじゃね?
なんか
嫌な予感もするし・・・さ。
あー
でも
夢がうるせーから無理だよな。
やっぱ
地道にするしかないのかなぁ。
あー
しゃーないな
マー吉には黙ってて正解だったな。
「あんた、学校休んで迄する事?」って言われそうだし
絶対に面倒臭がるだろうし。
上手くいかなかった都度に
適当に言って引き延ばそう・・・。
私、悪い奴・・・。
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ファーストインプレッションに入る。
マー吉には
「人間違いしない為にも家まで行って母親に会ってほしい」と
言っておいた。
ついでに家の周りを無駄に周回して
近所の人に会釈だけしておいてと
行け加えた。
「何で」って
聞かれたから
「印象付けしたいから」と
そこは正直に話しておいた。
マー吉は指示通り
鈴木四郎の自宅付近を
挨拶しながら無駄に周回し
その後
母親に接触をしてみせた。
私の狙いとしては
この行動で
ご近所さんが噂をして
且つ
母親も我が息子に聞く流れが出来た訳だから
当然聞くし
ヤツ(鈴木四郎)も気になる方向に進む筈。
モヤモヤしだしたら
接触したくなるのが常だから
接触を試みようとする。
そんでもって接触して
タイプの子だったら・・・
と
こんな手筈だ。
あとはハズれた場合に備えての
リカバリーのタイミングになるんだけど
キャラを投入し過ぎた場合
何人か咬ませていたとしても
流石のアイツ(鈴木四郎)も疑うだろうから
そこは慎重に見極めるということで
取り敢えず一発目として
春奈の寡黙な感じと
万人受けする【礼儀正しいお嬢様】をミックスした
【高貴な後輩ちゃん風】で行く事に決め
マー吉へとお願いをした。
その次は【先輩ちゃん】で行こうかなどと考えつつ
勿論
身バレも警戒しつつ
放った
初弾の結果を待った。
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いやいやビックリした
初日で命中だなんて。
しかもクリーンヒットって
何なのよ!
やっぱり
女性に興味が無いなんて
嘘なんじゃないの?
何処から見ていたのかは知らないけれど
物凄い勢いで喰いついてきたじゃない!。
しかも
「好きだ」なんて言ってるみたいだし
恐怖すら感じるわ。
ってまぁ
そう言いつつも
作戦通りに
喰いついてきてくれたんだから
感謝しないとね。
そのお陰で次の段階である
【エサ】をあげれるんだから。
端的に言えば
エサは【手紙】なんだけど
内容は勿論
作戦を踏襲したもので
それを母親に渡して
更に
母親がヤツに渡して
からの
ヤツが読み
読んだ後で
ヤツがするであろう行動を
今度は待つことになる。
上手いけばいいが・・・・。
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上手くいった。
森田匠から
早速話題に上がってきた。
匠「何故だか判らないけど、あれだけおまえらを嫌っていたアイツが
味方していたぞ」
匠は
学校で説得をしていた鈴木四郎の様子を
話してきた。
その様子から察するに
思惑通りの結果が得られたのが分かった。
良かった良かった!。
マー吉のリスクも
最小限ってもんだから
完全勝利と言っていい。
これからは
実在しないヒロインを
アイツは探し求めるのだろうし
それに
もう既に
私の作戦の片棒を担いだ
言わば
共犯者に成り下がってしまっているのだから
仮に
本当に自身で調べてみて
ハメられたと悟ったとしても
「実はあの話はウソでした」だなんて
奴が
再度皆には言えないのは
目に見えて判る未来。
だって
二転三転する話を
誰が本気にするかって事で
アイツ自身も疑われるだろうから
高い確率で言わない
いや
言えないのだ。
証拠隠滅も完璧だ・・・・。
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鈴木四郎が教室で説明をしているのを
天瀬雪は
近くで聞いていた。
他の連中は
興味有るのか無いのか判らない顔で
「ふーんそうなんだね」と
軽く返事をしながら
耳を傾けていた。
特に疑いもせず
最後まで
鈴木四郎の演説を聞いている
それらの中で
一人
彼女(天瀬雪)だけは
途中でその場から離れていった。
そして
人気が無い校舎裏まで移動すると
着くや否や
突然噴き出し笑いを始めた。
よほど鈴木四郎の話が面白かったのか
何なのか
暫くの間笑い転げて
そして
笑い疲れた時
一言
「罠に掛かった」と
ニヤケながら吐き捨てた。
想う @haretokidokimomo
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