想う

第43話 松本楓(まー吉)の憂鬱③ (鈴木四郎の母編)

まったく・・・・・

家のどら息子ときたら

血相変えてバット振ってると思ったら

今度は引き籠りになっちゃって・・・

何を考えているのか判らん・・・・。

部屋からは出て来ないし(引き籠りですから)

ドア越しに声を掛けても

全然反応無いし

お父さんは

「お前に任せる」って

逃げちゃうし・・・・

ほんっと男って勝手！。

どうしていいのか判んないから

児相(倉敷児童相談所)に相談にも行ったんだけど

「お子様とご一緒にお越しください」って言ってENDだからね。

私の説明聞いとんか？

部屋さえ出てこねーんだよ

クソ息子は！

横着せずに

先ず家来いや！

アホンダラって

心の中で吠えちゃったんだよね

ガッツリと。

あーほんと

頭が痛いわ。

どうするかねぇ・・・・

フー

溜息しか出てこん・・・・・。

まあ

それでも、なんて言うの？

食事だけはね

部屋の前に置いてたら

食ってくれるからさ

死にたくは無いんだなって

それだけは解ったからさ

まぁいっかって

なったよね。

それに

なんだかんだ

あんなアホ息子でも

腹を痛めて産んだ子なんだから

当然大事になるしね。

不様な死に顔なんか

ホント見たくはないし

願わくば

将来

良い人と出会ってくれてさ

幸せになってもらってさ

そんでもって

私を楽させてくれたら・・・なんてね

そんな夢を見ちゃってさ・・・

フー

仕方が無い・・・

夕飯の材料でも買って帰るかね

あー仕事疲れた。

ー－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－

いつも行くスーパーの近くにね

私を誘惑する

お菓子屋さんが有るんだけど

あのね

其処のショートケーキが

ほんっとうに激ウマなのよ。

だから唯一のストレス発散になっちゃっててさ

家のには内緒だけどさ

撮り貯めたドラマを観ながらさ

それを食べる訳よ。

いやー

ほんとに夢心地よ！

もう

止まんないんだよね口が。

私の力じゃ止めらんないんだよね

あー

デブっちゃうよねー

確実に

ヤバいよねー。

って

あっ御免

それはいいんだけど

そんな【ご褒美】を買っている時なんだけどさ

なんか

私をさ

ジロジロ見てる人が居たんよ。

ほんと

偶然見付けちゃってさ(鈴木四郎母は鈍感である)

それでね

その子ね

スーパーの中だろうが

何処だろうが

付いて来る訳よ。

正直

【キモ】って思ったんだけど

それで私ね

怖くなっちゃってさ

交通手段がマイカーなんだけど

車に避難したんよ。

そんでもって

まぁ車で家に帰る訳じゃん

普通

それで家に着いたらさ

「流石にここ迄は来ないでしょ」って

思う訳じゃない。

ところがよ！

暫くして

妙に気になっちゃったから外を覗いてみたらね

何とビックリ！

来てるんだよねー

その子

これには驚いたわ。

それで

「わっ！変質者じゃぁ」って

なっちゃって

それで

警察に通報じゃーって

電話掛けようとしたんだけどね

そこで特徴言わなきゃって

その子をマジマジ見て

あっご免

その子女の子ね

いやはや

めっちゃ可愛いんだけど・・・

あー

そこはいいか

見覚えがある服を着とるって

なったんよ。

そんで思い出そうと必死になっちゃってさ

そして考えてさ

考えてたらさ

そしたらさ

あっって！

家のクソ息子の中学時代の制服じゃんかーって

思い出したんよ。

そうなったらさ

滅茶苦茶彼女が気になっちゃってさ

パッて家の外に出てさ

その子に声掛けたんよ。

そしたらさ・・・

深々と頭を下げきてさ

その子

「不快な思いをさせてしまい

本当に申し訳ありません」

「私は、鈴木四郎様の中学時代の後輩に当たります、【小野寺檸檬(おのでられもん)】と申します」って

言うんよ。

一発で金持ちの娘と判ったね。

さっきの話じゃないけどさ・・・

私の幸せ・・・・

いやいや脱線した。

そんでさ

要件聞いたらさ

「四郎様への身を按ずる気持ちが抑えきれず

先ずはお母さまに挨拶をと思いまして

不躾(ふらち)は重々承知の上で

押し掛けてしまいました」って

言うんよ。

この子・・・・

四郎に惚れてんの？

ってなっちゃって

いや

良いんじゃない！

親としても

ビックチャンスじゃない

って思ったのよ。

だからさ

気を利かせてさ

「四郎に会わせてあげるよ」って言ってあげたんだけど

その子に。

好きならば嬉しい限りじゃん

絶対に。

それが目的だろうしね。

なんだけどさ

その子さ

あっ

檸檬ちゃんか！

レモンちゃんね

わかんないけど

会わないって言うんよね。

恥ずかしいんかな？。

んで結局

渡してくれって

花束を貰っただけなんだけど。

それも高そうな組み合わせのやつ。

それで

渡し終わったらさ

深々と頭を下げちゃって

そんで

静々と帰って去(い)っちゃったんだよね。

もう

この

アフターワークの下りは

何だったの?ってなっちゃって

完全な尻窄(しりつぼ)みだよね・・・って

まあ・・いっかになっちゃったよね・・・。

しゃーないから

この花束を奴に渡そうと

家に入ったんだけど・・・

驚いた

バカ息子がさ

玄関迄出て来とったんよね。

思わず

「何しとん？」って言ったんだけど

返事が

「お母さん、明日から学校行きます

ご迷惑をお掛けしました」って。

ナニそれ？

やっぱり男は勝手だねぇ・・・・・。