伝播

 ブナの森の深い闇の中、スラやガルの部族ではない違う模様の入れ墨を顔にしたせむしの男が、落ちている男の左手を拾った。

 せむしの男はスラとガルのやりとりをずっと見ていた。

 せむしの男はゆっくりと落ちていた左手のこぶしの指を一本一本開いていった。

 中には米粒が数粒だが入っていた。

 その男は落ちていた左手を捨て、銀の粒を掴むとブナの林をさらに東へと消えていった。


 こうして、武蔵野台地より東に稲作が広がっていく。

 時代は暫く止められても、もう戻すことは出来ない。

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銀の粒 美作為朝 @qww

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