純和風ミステリ。

 面白かったです。時代背景の考察を抜きにして、語ってみましょう。
 山は怖いところだと語っていた、弥(だったかな?)が印象的で、心身ともにこの小説の世界に引き込まれます。時代は恐らく昭和前期頃の山を想定していらっしゃるのかな、とも思えました。バブル崩壊後の日本。田舎の家は経済格差と共に二極化し、時代も先進派と停滞派に分かれる様相が著しくなるこの時期だから、多分作者が描いていた風景は歴史を深く読み込んだ人間にとっては味わい深い小説になるだろうかな、と感じていました。
 しかし、ミステリという構造に転換して考えてみましょう。これは、新機軸のミステリになってしまいます。ミステリとは謎の掲示が待っています。謎の掲示が、日常から端を発する形式の近年の流行ミステリに近い形のミステリ形式となっていて、これは、非常にダブルスタンダードで描かれた意欲的な作品で、僕は、この作品はもっと形式をしっかりすれば、よりよい作品と化すでしょう、と考えます。