第22話 テレビの影響力

マスメディアがどのくらい力を持っているかについての研究には、いくつかの時代的な変化があるそうだ。

初めは、マスメディアは影響力が強いものとされていた時代。次が、マスメディアの影響力はそれほどでもないとわかってきた時代。そして今に続く段階が、マスメディアはどういう点で影響力があるのか仮説が出され研究されている時代。


アジェンダセッティング効果というのは、マスメディアはお題の設定に影響を与えるという話だ。ある話題についての賛成反対とかの意見を左右する力は持っていないが、その話題が議論すべき意味のあるものだ、という共通認識を作り出すのには、マスメディアが役割を果たしているという。選挙の公約にいろいろなことを書いていたとしても、マスメディアが大きく取り上げる内容でないと印象に残らない、みたいなイメージがあるので、この効果は納得だ。

選挙の公約の場合には、複数人を並べて比較しやすい項目だとか、社会で話題になっている事柄に関連して多くの人が知りたがっていると考えられる項目だとか、多少はどのアジェンダを取り上げるかについて合理性があるような気がする。どのテレビ局も結局同じような事柄を取り入れているし、独自の項目を持ってきたとして、他と差別化を図りつつスパイス程度の位置づけのものが多い。

テレビは視聴率が大切だから、見てもらえなくなってしまうような冒険はできないということもあるのかな。


マスメディアには、人々の考えに影響を与えるような力はない。ということは、テレビを見過ぎると物事を考えなくなる、みたいな話も、そこまで影響はない、と否定できるんだろうか。

私はそこにはやっぱりテレビの影響が働いていると思う。

英語には肩こりという言葉がない、ということを聞いたことがある。人の体の構造として、同じ筋肉の疲労で同じような症状は出ているのだろう。けれど、その症状をあらわす言葉が無ければ、それを敢えて意識することもないということのようだ。英語圏で育った人が日本で暮らし、日本のテレビCMなどに触れていると、それまでと違って肩こりを発症するようになるんだって。

そんな感じで、今まで考えもしなかったようなことを気にするようになるという効果や、それまで知らなかった人がある方向の考えをもつようになる効果が少なからずあると思う。もともと自分なりの考えを持っている人に対して、その考えを変える力はないのだとしても、そもそも白紙の状態の人に対してなら、こういう議題が大事なんだということも、この議題についてこういう素敵な考えとこういう危うい考えがあるんだ、ということも刷り込むことはそれほど難しくない気がする。

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あたしのメディア論 @kuragenoongaeshi

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