ゾンビ事故

ゾンビ事故

　その事故映像は後にとあるネットの掲示板から波及したと言われている。

　首相の目に入った時には違法ダウンロードと違法アップロードを繰り返したことにより画質が落ちまくった状態であった。

　現在でもその現場がどこなのか分かっていない。

　窓の無い鉄筋コンクリート造の部屋の中、椅子に縛られた子供が部屋の中央にいた。

　子供が暴れるうちに椅子が破壊される。そしてカメラに向かってユラユラと歩みを進めた。

　カメラが動揺からか揺れる。誰かの言葉が動画に収められているが聞き取れるものではなかった。

　そしてカメラが床に落ち、床に広がる血のような液体。それで映像は止まった。

　その映像がアップロードされた日から数か月後、世界はゾンビパニックに陥った。同時多発的に起こる人間の凶暴化。それが後に回復不能な脳の汚染によるものだということが発覚するまでの間に被害はどんどんと広がった。

　医療、治安は崩壊していった。

　集団暴徒の鎮圧の対策を検討する段階になって、首相はその動画を目にすることとなった。

　現在ではゾンビ感染者の管理ミスによる事故映像と言われている。国が知らぬ間に起きた事故であった。

　現在も追いつめられた人類は国会議事堂に集まり、防護壁を強化しながら暴徒を鎮圧するための会議を続けるのだ。それを世界へ届けるテレビ関係者も新聞関係者も、外を蠢く感染者の中に交っていた。