これなに? これなに? ねこー!
403μぐらむ
猫(ΦωΦ)ノシ
短いです。山も谷もないですよ?
(ΦωΦ)
こぢんまりとした2DKアパートの我が家に今日猫が来る。
正確には宅配便にて猫が届く。
あいにく運んでくるのは
ちなみに我がアパートは当然ながらペット可である。
我が家にやってくる猫はいわゆる保護猫サイトで見つけた子で猫種はラグドールと言うものらしい。
というのもわたしはこの猫には詳しくない。
いや、すこし語弊があるな。
猫にはそこそこ詳しいが、猫の種類については詳しくないといったほうが間違いない。
とにかくその保護猫サイトでわたしは彼に一目惚れをしてしまい、すぐさま里親申込をしてしまったくらい可愛らしい猫だったのだ。
そこからはトントン拍子で話は進み、本日を迎えた。
元の飼い主さんとは保護猫サイトを介したメールでのやり取りのみで若干の不安があったのだが、わたしは猫を迎え入れることができるということで舞い上がってしまい不安など忘れていた。
猫トイレを揃え、爪とぎにケージ、餌皿に水皿エトセトラエトセトラ2DKの一部屋が猫様グッズで溢れてしまいそうだった。自重したので溢れることはなかったけど。
我が家にやってくる猫様は一歳になったばかり。生後数ヶ月で元の飼い主に買われその後半年で、言葉は悪いが捨てられてしまう境遇のにゃんこ。
たぶん元の飼い主さんは勢いで買ってしまい、飼うってことのなんらかをわかっていなかったんだと思うな。
だから譲渡先のわたしに元飼い主さんは全然会わないし、会おうともしないんだと思う。後ろめたいって感じなんだろうとは思うが誠意が足りない気がする。
そんな生き物を飼うってことの想像もできないぐらいだったら猫なんて飼わなければいいのにって思うけど、そんなんだから今日のこの結果になっているんだと思う。
まあ、元の飼い主さんが何であろうとわたしは猫様を大事にするつもりなのでこれと言って思うところはない。そんな風に思っていた時期がわたしにもありましたよ。
ピンポーン♪
インターホンが鳴る。
……回覧板だった。ちくせう。
やけに早いなとは思ったのだよ。到着予定時刻はあと一時間以上あとだからね。
ピンポーン♪
インターホンが鳴った。予定時刻だ。
「はーい!」
モニターで配達員を確認してドアを開ける。
猫の入ったキャリーケースと封筒入りの手紙を受け取って受取証にサインをしたら猫様と二人きり。
「むふう」
鼻息荒くまずは猫様とご対面のためキャリーケースを開ける。
「かわいい! けど……」
最初に思ったのは痩せすぎ。そして長毛種なのにグルーミングされていなくて毛が絡まっているということ。
目やにも多い気がする。お尻も汚い。
この姿を見る前からそうするつもりだったけど、一旦出してあげた猫様をもう一度キャリーケースに戻し、そのまま動物病院へ。
病院についてから一緒に添付されていた元の飼い主さんの手紙を読む。
結果から言うと読まなければよかった。
この猫、ラグドールは購入時二十万円以上したとか、予防接種や男の子なので去勢も全てしてあるから全部で三〇万円以上かけた、だのが最初に書いてあった。
「だから何なのよ? ただであげたんだからお得ってか? ざけんな」
壁は傷つけるし、高い餌も食べないしなのでうちとの相性が悪いのだと思うから、あなたに任せます。よろしくと結ばれていた。
ちなみに名前はレオンだそうだ。名前だけは立派なのを貰ったみたいだね。
それ以外が全くの
「市川さん~ 市川小豆ちゃ~ん。二番診察室にお入りください」
あ、呼ばれた。
「はーい」
最初に濃い茶色の毛を見てわたしはすでに彼の改名を終えていた。
わたし
診察の結果、小豆はやっぱり栄養失調気味だった。
点滴を打って、落ち着いたところで絡みついた毛を動物病院併設のペット美容院できれいにカットしてもらうことにした。
病院と美容院。びょういんとびよういん……。なんかウケる。
たぶんこういった変なところが、わたしが彼に振られた理由なんだと思う。この彼っていうのは人間の方の彼ね。
一年ちょっと付き合ってわたしも里子に出されたわ……。貰い手は今のところいないけど。
ああ‼ もう! 余計なお世話です。
なんだかんだ数時間はかかるということなので小豆を病院に預けて一旦家に戻った。
「元の飼い主に一言言ってやらないと気がすまないんだから!」
息巻いてMacBookを開いて件の保護猫サイトの連絡コーナーを開く。
「いなくなってら……」
元の飼い主は早々にサイトのIDを削除して消えていた。
宅配便の送付元住所をストリートビューで確認してみたがそこは倉庫だったし、薄っすらと写っていた表札は元飼い主の名前ですらなかった。
「このイライラはどこにぶつけたらいいの⁉」
(ΦωΦ)
「だからって急に呼び出すことはないでしょ⁉」
「……ごめん」
「すごく大事な用事だって言うから車まで出してもらったんだからね‼」
「……ほんとすみません」
友人の知世に愚痴を聞いてもらおうとカフェに誘ったらどうもわたしの誘い方が切羽詰まったように聞こえたらしくお誘いではなく呼び出しに聞こえたようだった。
しかも知世は彼氏の慎一くんとお
「はい。とてもとても申し訳ないです……」
知世と慎一くんとまだ名前を知らない氏さんを前に平謝りなのでした。あはは……。
「まあ香澄は実家で猫を可愛がって飼っていたからいろいろと思うところがあるんだろうけど周りが見えなくなるのはどうかと思うよ?」
「はい、ごもっともです」
「そういうところも湊さんにふられ……あ、いや。ごめん関係なかったね」
「ううん。たぶん間違ってはないと思うから平気」
湊さんやらがわたしの元カレの名前だ。当時はいろいろと恋愛相談に乗ってもらっていたから知世はそこのところの事情に詳しい。
「でも猫ちゃんもよかたんじゃない?」
「な、なにが?」
あからさまな話題の転換にわたしのほうがついていけない!
「香澄に貰ってもらえて。香澄ならちゃんとお世話するでしょ?」
「そ、それはもちろん!」
「じゃ、良かったじゃん。猫って二〇年生きることもあるっていうじゃない? 残りの一九年が幸せなら問題なきではないかな?」
……そうだね。過ぎたことよりも先を見据えよう。
捨てる神あれば拾う神もある。湊も元飼い主も神じゃないけどな! ついでにわたしは拾われてないし!
「ねえ、市川さん。その猫の種類ってなに? 雑種?」
わたしと知世の話に入ってきたのは慎一くん。お叱りとかが終わったタイミングで話を広げてくれるなかなかのコミュ強っぷりを発揮するやつだ。
「ううん。ラグドールって種類のオスだよ。まえに実家で飼っていたのが短毛の雑種だったから見た目からしてぜんぜん違うんだよね」
長毛で青い目をしたハチワレさん。ブルーポイントバイカラーって毛色らしいがどこにブルーの要素があるのかさっぱり分からんやつ。
今頃美容院の方できれいにされている頃だと思う。
「ラグドールなのですね。あれって大きくなりますよね?」
車を出してくれたという名前わからない氏も話し出す。
「あ、はい。そうなんですか? あまりまだわかっていなくって。えっと……」
「あ、すみません。名乗っていなかったですね。
ううう。非常に申し訳ないです。無関係の第三者まで巻き込んでしまった……。
「い、市川香澄です。本日はほんんんっとうに申し訳なかったです」
「いいえ。大丈夫です。どうせ暇でしたから。そう、ラグドール飼われるのにラグドールのこと知らないのですね。大きい子だと八キロ超えもいると聞きますよ」
八キロ? 実家で飼っていた雑種猫のゆめちゃんは最大でも五キロに行ったかどうかぐらいだったのに……。八キロ? マジか?
「でも、いま一歳で前の飼い主のせいで痩せてはいましたけどそれほど大きいとは思えなかったんですが?」
「三年ぐらいかけて大きくなって八キロです。僕の実家の子は六キロちょっとで止まっちゃいましたけどね」
あ、飼っているんだ。猫のこと子っていうからもしかしてと思っていたけどやっぱりね。
その後も西原さんとはラグドールのことで話が弾んだ。
(ΦωΦ)
化粧室から戻ると知世と慎一くんの姿がない。ぽつねんと西原さんが席で待っている。
「あれ? 知世たちは?」
「デートの最中を抜けてきたので再開するってさっき出ていったよ。……そろそろお迎えの時間ですよね、小豆くんの。病院まで送っていきますよ」
「い、いやいや。申し訳ないです!」
「もう少し話してみたいと思っていたのですが。……ダメでしょうか?」
ダメじゃないですが、もう少し話したいのはわたしに興味があるんじゃなくて猫に興味があるのですよね? やっぱり。
「では、香澄さんの趣味のお話とか聞きたいですね。さあ、お迎えに行きましょうか?」
「え? わたしの――」
「行き先はびょういんの隣りのびよういんでしたっけ⁉ くっくく、ははは」
もしかして拾う神現る?
(ΦωΦ)
うちの子(ラグ)が五歳になったので。誕生日はとっくに過ぎているけど(汗)
これなに? これなに? ねこー! 403μぐらむ @155
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます