第二話 放課後

 運動部の掛け声が聞こえ始めた午後四時頃。私は君のことを想っていた。すると突然、教室のドアが開く。

「あれ、綾乃まだ残ってたの?部活ないのにどうしたの?」

 教室に入ってきたのは後ろの席の山崎蜜菜だった。特に仲のいい友達がいるわけではないため、学校で誰かと話すことがあまりない私だが、この人とだけは話すことが多い。

「いや、ちょっと考え事してただけだよ。大したことじゃないんだけどね」

 苦笑いをした私を見て、蜜菜は何かを察したようにニヤついていた。

「かっこいい彼氏はどうしたのぉ?」

「うるさいなぁ、今日は家の手伝いだからいないのぉ〜」

 彼の父はおしゃれなカフェを経営している。彼は卒業してそこで働くことが決まっているため、進路を考える必要がない。私はそれでいいのかと聞いたが、やりがいがあるし面白いからいいんだと言って笑っていた。私は飲めないからわからないが、彼が淹れたコーヒーは美味しいと評判で近所ではチラホラとリピーターが出ている。着々と将来に向けて成長していく彼とは違い、私は何も決められずにいた。進学するのか、就職するのか、はたまた彼について行くのか。私は何も決められないままこれまでの高校生活を過ごしていた。私に自信がないのはこういうところから来るのかもしれない。そんな私を見て蜜菜は真面目な雰囲気で言った。

「何かあったら話してね、相談乗るからね」そんな言葉を残し、彼女は帰っていった。

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想えば遠い。 @TK_pomnail

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