第一話 帰り道

「今年も暑いね」

 八月の下旬、君の隣を歩くのもだんだん慣れてきた。慣れてきたと言っても別に最近付き合ったわけではない。付き合って一年以上経っているにも関わらず緊張しているのは、単純に私が君の隣にいることに自信が持てないだけだ。そんな私の言葉に笑顔で答える君は今日も優しい顔をしていた。

「もうすぐ学校始まっちゃうなぁ。でも、高三になると宿題あんま出ないから結構楽だね」

 学校に行くことが嫌なわけではない。学校が始まれば、自然と二人でいる時間が短くなる。そう、それだけなのだ。私が考えてることを見透かしたかのように君は微笑みながら手を繋いできた。夕方にもかかわらず汗ばむ帰り道で二つの影は互いの帰る場所へと分かれていった。


 

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