第二章 ギルドと魔王
第一話 カプレカ島
セバスに、島に名前が欲しいと言われたので、安直だとは思ったが”カプレカ”と名前を付けた。
セバスが、ルブランとして、島に訪れて、名前を”カプレカ島”と宣言した。従って、セバスは”カプレカの魔王”と呼ばれるようになった。
魔王への感謝が限界突破している子どもたちは、契約を行ったあとで、子どもたちには呼び名を授けた。
子どもたちの話や、大人の奴隷の話を聞いて、”名前”を与える儀式が危険な行為だと解った。セバスとモミジが、名前を持つ者たちを調べた結果、弱い”呪”が埋め込まれていた。人族だけではなく、種族に関係なく、『”神聖国が掲げる神”を信仰する』というクズのような”呪”だ。弱いので、拘束力はなかったが、”神は頼りになる”と認識をさせる呪いだ。
気分が悪いので、奴隷たちの解呪を実行した。奴隷契約とは別なので、子どもたちには”呪”は打ち込まれていなかった。名前を与える儀式のときに、使う道具が怪しいと思っている。
カプレカ島に来ている、帝国の駐在官を呼び出して、話を聞いたが、皇族や上級貴族には知られている話だ。帝国の上層部が、神聖国に非難声明を出さないのは、”実害が少ないから”と、説明を受けた。解呪をしても、帝国は干渉しないと言われたので、遠慮をしないで解呪を実行した。ギルドも上層部は知っているらしいが、どのくらいの層まで知っているのかはわからないと言っていた。ギルド側からの提案は踏み込んだ物で、カプレカ島に入る者を”解呪”して欲しいというものだ。
”本”を調べたら、”解呪”を行うための道具が存在していた。誰かが作ったのだろう。説明を読んでもリスクは無い。問題は、ポイントが誰かの手に渡る可能性があることだ。自分で作られないか?
俺が考えてもわからない。それなら、物作りが得意な連中に丸投げすればいい。それで、アイツら・・・。情報を与えて、素材を与え、アイディアを渡したらたら、3日で作ってきた。運用は面倒なので、ギルドに任せる。どうせ、コピー商品が出回るだろうから、ふっかけた値段を設定したのだが、値引き交渉もなく承諾された。
正直、この世界の金は必要なかった。ポイントが全てだ。
ギルドは、コピー商品を作らない。どうやら、簡単には出来ないようで、1台金貨で1,000枚にしたのだが、連日の注文が来てしまっている。他にも、ダンジョンに入るのに、銀貨1枚を徴収している。ダンジョン廻りで働いている元奴隷たちの給金にするためだ。帝国の騎士や兵士が使っていた武具を作り直した物も飛ぶように売れている。子どもたちに渡しても材料が余った。余り物で作った物だ。
売上が、たまりに溜まって、金貨が10万枚を超えた時に、”本”にエクスチェンジという機能が追加された。
ポイントと硬貨の交換が出来るようになった。レートは、以前に俺が感じたのよりは安い感じがした。暇な時に、検証をしてみようと思う。日本がベースになっているとは思えない。この世界でのレートだとは思うけど、そうなると日本から呼び出す物が安いように思えてしまう。
俺が、マスタールームで暇な日常を過ごしている間にも、セバスたちは忙しく動いている。
カプレカ島は、元奴隷たちが住民として過ごしている。
最初の300名の子どもたちの家族は見つからなかった。その後に捕らえた200名弱は、カプレカ島の運営を行っている。四天王をトップに置いた形だ。子どもたちの学校は、地下施設からカプレカ島に移動した。
帝国は、皇帝に敵対していた貴族派閥を徹底的に潰した。神聖国や連合国に繋がる者たちを、煽りに煽って、”皇太子の敵討ち”の実行をさせた。事前に、皇帝からの密書で知らされていた。準備万端で待ち構えた。
兵力は、前回以上の3万を数えた。しかし、3万の烏合の衆団だ。前回以上にひどい結果になった。
前回の教訓を生かして、魔王城(仮称)に入るまでの罠は極力減らした。減らした理由は、アドバイザーに就任した者たちの助言に従ったからだ。
アドバイザーには、魔王に心を売った。子どもたちが就任した。
狐人の族長をしていた女子と、人族の族長をしていた男子が、
その結果。
攻め込んできた。3万の愚か者たちは、魔王城(仮称)の手前で陣を張った。ポイントがガバガバ入ってきて嬉しい。物資だけを奪ったら、伝令が走って、物資を輸送してくる。輸送してくるにも、人手が必要だ。また人が増える。増えた人を養うために、また食料が必要になる。カプラン島に拠出を命令してきたが、通常の10倍の値段で売りつけると言うと、襲い始めた。カンウとバチョウが、部下を連れて瞬殺した。そもそも、湖がある島をどうやって攻め落とすつもりだったのかわからないが、全滅したので、忘れることにした。
アドバイザーたちの意見を取り入れて、魔王城(仮称)の廻りは森にした。内壁と外壁の間は、沼地にして、休めるような場所を作らないように改良した。
森には、食料にはならない魔物がポップするようにした。沼地にも、同じ様に食べられない魔物を放った。
3万を超える”討伐軍”は、吸い込まれるように、魔王城(仮称)に攻め込んだ。
子どもたちは、ノリノリでアイディアを出している。俺と契約したことで、精神が変質してしまったのかと思ったが、子どもたちが言うには、”手に入れた幸せを失いたくない”ということだ。
この環境を維持するためには、魔王が必要になる。魔王の討伐を目論む、魔王討伐軍は、自分たちの敵でもあるということだ。
それにしては、楽しんでいるように見えるのは、気のせいだろうか?
うん。俺が安全になったと、考えよう。
あと、何がトリガーになったのか不明だが、”本”の機能で、”呼び出し”の一部を”契約者”に権限を与えることで、使わせることが出来た。使えるポイントの上限や呼び出せる項目の制限が、個別に付けられる。
すごく面倒だ。
なので、セバスには、全部の権限を与えた。向こうの世界の物資は、一度、俺が呼び出す必要があった。セバスが認識さえすれば、呼び出すことが可能になる。マスタールームと隣の部屋でしか存在ができない制限は外れなかった。
モミジと四天王には、魔物の召喚?と、この世界にある物資が呼び出せる権限を与えた。セバスとの違いは、向こうの世界の物資だけだ。
セバスには、入ってきたポイントの10%を振り分ける。収入も細かく設定ができるが、面倒なので、加算されたポイントを振り分ける設定にした。1ポイント未満でも振り分けられるのは確認している。モミジと四天王も、同じ10%だ。10%が上限なので、上限を与えている。全体の6割を、渡しているのだが、セバスたちは、ポイントを使って、罠の設置や施設の充実を行った。罠の配置は、セバスたちにもできるが、承認をおこなって反映するのは、俺が行う必要があった。安全面を考えれば、しょうがないのだろう。
3万の大人たちは、子どもたちの容赦がない攻撃で、数を減らしていった。
攻め込んで、1週間後には、連携が瓦解して、魔王城(仮称)の森で、別々に陣を張って、お互いを攻撃し始めた。逃げ出せない状況で、物資の奪い合いが発生した。
数が、1万を切った辺りで、カンウとバチョウに率いられた魔王軍が出現して、蹂躙した。
そして、3,000名を魔王城(仮称)の地下に招待した。規模が大きめの実験に必要な素体が欲しかった。死なない場所で、実験体として過ごしてもらうことになった。
帝国には、苦情を伝えた。1ヶ月以内に、誠意ある返答がない場合には、宣戦布告とみなして、魔王軍が攻め込むと伝えた。
最初から申し合わせていた内容だ。帝国からは、返答期限のギリギリになって、攻め込んできた軍の責任者や領主や貴族家の当主が連れてこられた。賠償金も、金貨で3万枚にもなった。
魔王城とカプレカ島は、今日も平和だ。
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