第5話 田螺
小学生の頃なんですけど、なおとくんっていう男の子がいたんですよ。
その子、クラスでいじめられてて。
きっかけは忘れちゃったんですけど、おとなしい子だったので多分そういうのが原因だったのかなって。
ほら、小学生とかってちょっとした事でいじめちゃったりするじゃないですか。
先生もおふざけの延長としか見てなかったみたいで。
そんなこと言ってる僕も見て見ぬふり、というか別に気にしてなかったんで同罪ですかね。
そのなおとくんをいじめていた中心人物でゆうきくんって子がいたんですよ。
その子が風邪か何かで休んだんですよ。
僕がゆうきくんの家から一番近いので、先生から家にプリントを届けてほしいと頼まれました。
放課後に少し友達と遊んだ後、たしか4時半くらいですかね。
プリントを届けにゆうきくんの家に行きました。
その時に、ゆうきくんの家の裏に人影を見ました。
ゆうきくんの家は一軒家で、まあごく普通の日本家屋って感じでした。
それで、その家の裏に人影を見たので、好奇心からつい見に行きました。
そうしたら、なおとくんがいました。
なおとくんは大きな袋とスコップを持っていました。
僕には気がついていなかったみたいなので、そのまま何をしようとしているのか、見てみることにしました。
なおとくんはスコップで地面に穴を掘って、袋の中にあるものをその穴に入れてました。
袋の中にあったのは、小さい三角形の黒っぽいものだったと思います。
それが多分数十個くらいですかね、穴に入れていました。
一通りの作業が終わったらしい、なおとくんと目が合ってしまいました。
その時のなおとくんの目は、真っ黒になっていたのを今でもよく覚えています。
瞳が大きくなったとかじゃなくて、そもそも目が別のものに置き換わってしまったように見えました。
僕は動けませんでした。
なおとくんはそのまま逃げるように、どこかへ行ってしまいました。
その日の夜でしたね。
ゆうきくんの家が火事になったのは。
家は全焼して、ゆうきくんとその家族は無事だったらしいです。
でも、ゆうきくんだけは火傷で失明してしまいました。
それと関係があるかはわからないですけど、焼け跡から大量の生き物の死骸が見つかったらしいです。
多分なおとくんが埋めたものだと思います。
短編怪談 宇佐美 涼 @usami2511
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