over extended.
わるくない月だった。肴に酒を呑むにはちょうどいい。
「ほら。酒だけ呑んでるとからだこわすよ」
彼女が、何か食べるものを持ってくる。
漬物。カルパッチョ風の何か。焼鳥。ぜんぶ、自分が作って冷蔵庫に入れておいたやつ。
「んん。おいしい」
彼女が、焼鳥を食べる。
「旨いか。それはよかった」
「頭の弾も出しちゃったけど、大丈夫?」
「大丈夫だろ。こころなしか頭が軽い」
彼女が、いる。それを、なんとなく確かめたくなった。
手を伸ばす。
それに気付いた彼女が、手に調査結果をセッティングしてくれた。
「どうぞどうぞ」
違うんだけどな。
とりあえず、渡された調査結果を見て。漬物をひとつつまんで。酒を呑む。
わるくない結果だった。らしい。
「RCC値、最初から計器ぶっ壊すぐらいのマイナスだって」
「よくわからん。RCCってなんだ」
「ここ。この値がプラスだとわるい狐で、マイナスだといいひと。で、あなたは計器ぶっ壊すぐらいのいいひと」
「ああそう。だからおまえに撃たれた弾も抜かれたわけね」
「そゆこと。ん?」
彼女。びっくりした顔。
「記憶あるの?」
「弾抜かれたら戻った。おまえが撃ったんだな」
「うん。いい腕してるでしょ?」
そう言う彼女の腕に、さわる。
たしかに、彼女がここにいる。
「生きてるよ。しかたないよ。ごめんね。仕事だもん」
「いいよべつに。いま生きてここにいれば、それで」
セックスを仕掛けてくる。しまった。腕をさわった延長線上か。
「やっべ」
「逃げるの。また銃で撃つわよ?」
「ひい」
セックスのトリガーは、結局彼女が持っている。彼女が引き金を引けば、すぐに。できるようになってしまう。
「今日は二桁しようね?」
どうやら、夜が長くなるらしい。
彼女にやさしくされながら、なんとなく、位置をずらしていく。彼女と月が、両方見える位置。
わるくない眺めだった。
夜と共に (※えっち注意)(場合によってはlily) 春嵐 @aiot3110
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