「あの。そろそろ戻っても？」

『そうだな。そろそろ経過観察も必要ないか』

「あのひと、今日もひとりで月を眺めてお酒呑んでるはずです。わたしの身体を探しながら」

『そう言われると不憫だな。狐なのに』

「あのひとはいいひとです。狐だけど。ちゃんと仕事もこなしてる。過去の記憶もない」

『RCC値が反転する例なんて聞いたことがない。常に調査は続けなければならない』

「あのひとの隣にいられるなら、わたしはなんでもいいです。新しい戸籍も、もうできてますよね？」

『わるいやつになったら、すぐに引き金を引けよ』

「あのひとを撃ったのはわたしですから。いつでも。あのひとの側頭部にはまだ爆発していない弾が残ってます。ちゃんと、わたしが引き金を引けば、爆発します。だから」

『わかったわかった。じゃあ、現時点をもって擬装は解除。男のところに行ってこい』

「あ、男だと思ってるんだ？」

『は？』

「あ、いや、気にしないでください」

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい