87 開高健『日本人の遊び場』⑪脱線:遊びの予算は? その4

●「湘南の海岸」


 まず“大磯ロングビーチ”のお値段いろいろが並びます。


〈朝九時から夜九時まで、平日が四百エン、子供は二百エン、日曜は五百エン、子供は二百五十エンである。夜だけ泳ぎたいという人は午後四時から九時までが、大人二百エン、子供百エン、団体様になると一割引、二割引、百人以上になりますと”御協議により決定”とチラシに書いてございます。ほかに、ゴム・ボート、パラソル、天幕、それぞれ有料でございます。なにげなくほうりだしてあるように見えるデッキチェアも、ひょいと腰をおろしますと一日分五百エンでございます。〉


 なかなかお高い! 遊園地もありますがその料金は割愛されてました。乗り物は飛行塔、ゴーカート、ムーンロケット、メリーミックル、メリーミックルってなんだろう、ぐるぐる回るやつみたいですが。


 シャワー・ルームは一回五十円、車の方は駐車料三百円、ホテルは二千五百円から一万円までこまかなプランがあると続きます。休憩は四時間が基準で一時間こえるたび二割増、ただし夕方五時まで、と。

 各国の料理が味わえる料理店は一品料理で二百円から三百円。“マイアミ”、“ニース”、“リオ”、“ワイキキ”、“バルセロナ”、“シドニー”、“ナポリ”それぞれの国名がついているパヴィリオンがあるそうで。


 ところが開高が“バルセロナ”に入ったところ、「“バルセロナ”と“シドニー”しかできません」と言われたと(笑)ちなみにシドニーは羊肉料理だそうです。


 ちなみに現在の大磯ロングビーチはこんなかんじらしいです。公式サイト。


https://www.princehotels.co.jp/pool/oiso/?gclid=CjwKCAiAlJKuBhAdEiwAnZb7lQWEQo3uwHOr_-zKymreRGnq10_sTB-JjsK3HoWDHSvkmuohdlSgxBoCrTkQAvD_BwE


 続いて江ノ島へ行った開高健は、”マリンランド“でゴンドウクジラとイルカとオットセイをみます。こちらは料金に触れていないので割愛しますが、飼われた海獣の暮しに思いを馳せて、味わい深い一文となっています。


 さらに夜ふけの葉山と逗子の海岸に出かけた開高。逗子はひっそりしていたのですが、泳ぎにくいはずの葉山の森戸海岸が出店でにぎわい、若者でわきたっていた。その様子がリポートされます。


 最後に深夜の江ノ島へ戻りますと、そこはただよう若者の群れが!

 警官の話によると、彼らは電車に乗り江ノ島駅に着くまでは真面目な若者で、到着したとたんに羽目を外してはじけてしまう(笑)ということで、普段は仕事にしぼられているからだろうというのでした。

 ビールを六本飲んで海で心臓マヒを起こしてみたり、深夜一時二時に真っ暗な海岸で首まで砂に埋もれてジッとしている少女がいたり、ちょっとのことで刃物沙汰になったり、なかなかイカれています!


 そんなところで「湘南の海岸」篇は終わります。

 ここで出てくる普段は仕事にしぼられている若者たちの有り様は、次回の、すでに取り上げましたが「ナイター映画」篇にも登場します。

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