68 カバヤ文庫のはなし。⑭

●原敏の思い


 原敏の文化への情熱。父兄たちの、キャラメルへの是非。

 しかし当時の子供たちのひとりとして、坪内は、


〈そのキャラメルを買えば本がもらえるということだけが魅力だった。(略)その本についても、(略)ごく単純に、ハラハラしたり涙を流したりして、本の世界に想像をひろげて楽しんだのである。〉(p52)


 と、大人たちの強烈な思い入れの外側にいたことを告白します。


 原の思いは、カバヤ文庫それぞれの「あとがき」から読み取れるのでした。


〈いつもカバヤキャラメルを可愛がって下さる、ニッポンの二千万人の子供さんの心を、美しく、清くたのしくするような、童話・絵本・グラフを、つぎからつぎに、みなさんにおくるために、カバヤ児童文化研究所のおじさんたちは、一生懸命にやっています。

 毎月つぎつぎに出る、カバヤの本を楽しみに待っていて下さい。

 カードがなくてこの本がほしい人は本代と送料をお送りになれば本をお送りします。(第一巻第一号、第二号)〉


〈子供のための憲法『児童憲章』の第九条には、「すべて児童はよい遊び場と文化財を用意され、悪い環境から守られる」と書いてあります。カバヤの本は、この精神で、おもしろく、ためになる、そしてみなさんが大きくなって、世界人としての豊かな教養が持てるようにと、カバヤ児童文化研究所のおじさんたちが、大学の先生がたや児童文化の権威者のかたがたと、一しょうけんめい研究して、こしらえた本であります。(第一巻第七号、第八号)〉


 先生になりたかったという原の本気が伝わるようですね。

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