69 カバヤ文庫のはなし。⑮

●カバヤ文庫の勢いと『カバヤ児童文化研究所』


 さて、カバヤ文庫の販売に文化を取り入れる狙いは大当たりし、社内に製本工場を持つまでに至りました。


 その編集兼発行人は、カバヤ児童文化研究所です。当初、岡山のカバヤ販売株式会社内におかれていたこの研究所、第二巻第二号の奥付からは京都市の印刷所、日本写真印刷株式会社の住所となっています。


 カバヤ会長、林原一郎は、この研究所から各種文化事業を、の構想を持っていたらしいと坪内は記します。


 さて、この研究所。原敏を専務理事として、総勢十人ほどの文庫編集員で構成されていました。

 編集員は、アルバイトの大学院生や高校教師などで、主に文庫に収録する作品のリライトに従事しました。


 キャラメルのおまけのために、ここまでできたのも、大きな反響があったからでしょう。


 カバヤ文庫巻末に寄せられる読者の声「町から村から」は、販売戦略もあり、そのような投書が選ばれたのだろうという推測もされますが、とにかくどれも本へ期待、希望にあふれています。


〈「出切ることなら私の本棚をカバヤの児童文庫で埋めたいと思っています。ずらっと児童文庫が並んだ私の本棚を夢に見乍らカードを集めています。 大阪市 太田恭子(六年)」〉


〈たやすくは本を入手しがたいという時代状況のなかで、各地の子供たちは本への夢をこの文庫に見たのであった。〉(坪内p68)


 次回はカバヤ文庫のリライトに携わったメンバーに触れます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る