57 カバヤ文庫のはなし。③

『おまけの名作 カバヤ文庫物語』(坪内稔典つぼうち ねんてん)は、1984年いんてる社より発行されました。


 冒頭で、著者自身のカバヤ文庫との出会いが語られます。


〈ぼくの「カバヤ文庫」は、井上菓子店の菓子ケース〉のなかにずらりと並んでいた。〉


 お菓子屋さんに並ぶ名作全集。


〈その「カバヤ文庫」のなかから、ぼくは『レ・ミゼラブル』を選んだ。その『レ・ミゼラブル』は、はじめてぼくのものになった本らしい本であった。〉


〈それまでぼくは、本らしい本、すなわちハードカバーの本を持っていなかった。月刊の雑誌を買っており、その付録の小説類が、ぼくの唯一の本だったのである。だがこの付録の名作は、残念なことにハードカバーではなかった。〉


「カバヤ文庫」、まずハードカバーという体裁自体が子供の憧れだったようです。


〈後年、改めて手にした「カバヤ文庫」の表紙は、ボール紙に上質紙を巻いたものにすぎなかった。この表紙が見返しの紙によって針金でとじた本体にくっついている。それはいかにも安上がりの製本だが、なにしろ「カバヤ文庫」は、キャラメルのおまけであった。安上がりの製本でありながらも、ともかくハードカバーであったところに、このおまけの人知れぬ工夫があったのかもしれない。〉


 何となく当時の「カバヤ文庫」がある光景と雰囲気がわかります。


 続きます。

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