54 作者の都合。『都新聞版 大菩薩峠』③
さらに続きです。はい。『都新聞版 大菩薩峠』一巻の巻末解説(解説:伊東祐吏)を読み返しました。
中里介山のプロフィール、ざっくりと頭に入ってたはずなんですがいろいろ忘れていて(笑)いろいろつながりました。解説大事。
そこからまとめます。
●そもそも『都新聞』はローカルな小さい新聞で、連載小説は自社の社員が持ち回りで書いていました。中里介山もその一人。
媒体は新聞ですがローカルなもので、書いている人は素人です! ひょっとしたらWeb小説的な環境に近かったりして!
●『都新聞版 大菩薩峠』に手を加えて現在の形になったのは確かなのですが、大胆な削除、再編集があるのは物語の最初のあたり。書き直すほどに傑作になっていったイメージがありましたが、解説によればそこまででもなさそう。
大胆な削除、再編集が最初のあたり、は、わかります。作者自身が後日に訂正致しましょう、って挨拶してましたもんねえ。
そのへん、すこしくわしく。
●最初の単行本化のときは、いちローカル新聞社である『都新聞』の発行なので、予算や技術的制約があったと考えられるようです。
編集作業は社員である介山自身が活字拾い、活字組み、印刷までの工程を行っています。おそらく予算の範囲で一冊の分量に編集しなおす工程が入り、そうした条件下で削除編集もされたのではないだろうかと。のち、出版作業を他社に委託して、人気も出て一冊当たりのページ数と定価が上がったときには削除、編集部分が減っているので。
予算と技術的制約がある中で、持ち回りでいち社員がぶちかました大ヒット長編。
解説にもあった通り、自分の所属する会社の新聞だから、読者への呼びかけも、あとがきみたいなこともしやすかったのかなあ。
受け入れる読者も関係あるのかな。同じく巻末解説によれば、当時は読者もおおらかで、話のつながらない箇所とかあんまり気にしなかったようですし。
いやいや、講談本とか、語り口調の読み物のノリでやった可能性もあるし。これは他のサンプルがないとわからないことだな。保留します。
しかしこうなると、なんだかWeb小説作家のような親近感を覚えるのですが(笑)たまたま小説を書いて発表する環境が与えられた、プロ作家じゃない人が当時の娯楽小説のテンプレ時代ものからはみ出た独自の傑作書いちゃったんですよねこうして見ていると。
さんざん舞台化、映画化もされてますしねえ。
市川雷蔵、片岡千恵蔵は見てますけど仲代達也のは見てないな。
という話になると、また長くなるのでこのへんで。
『大菩薩峠』は大長編なだけあって、サイコホラー回もあれば、テレパシーで会話するなよー、ていうSF回、幻想文学回もあり、いくらでも話題があるのですが、日を改めて取り上げます。
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