50 昔は〈映画化〉したもんだ。⑥幸田文『おとうと』

 前回、脱線しましたが、市川崑『おとうと』冒頭を紹介します。


 映画の『おとうと』冒頭、原作では新潮文庫版で7ページほどの内容が2分30秒ほどに凝縮されています。

 原作通りに雨の中、姉、げんが弟、碧郎へきろうを追い、話をします。そのセリフのやり取り内に複雑な家庭の事情や、姉弟仲のよさを織り込み、うわあ、なんて脚本なんだ『キクとイサム』の水木洋子だセリフだけでここまでできるんだなあ、とカク活動をする者として勉強したところで、ちょっと映画の場面を追ってみます。


 傘をさしたたくさんの後ろ姿が土手の上を同じ方向に進んでいます。

 原作で描写された通り、大きな川のそばの、木が並ぶ土手の上です。


 00:00:40あたりで、一人の少女のアップになります。傘が持ち上げられると、主人公、げんの顔が見えます。


 やっぱり岸恵子の顔、派手だなあ(笑)


 00:00:48あたり、土手の上をうつむいて濡れながら歩く碧郎の横顔アップです。制帽から水が滴り、表情も浮かないかんじです。


 00:00:53あたり(以下、時間は厳密なものではなくだいたいそのあたり、と思ってください)、左側に桜の木の幹、中央に少し離れた碧郎が、後ろをちらちら見ています。

 その視線の先に、げんの後ろ姿が飛び出します。


 00:01:00げんが急ぎ足で碧郎を追いはじめたところで、画面はげんの横顔アップになります。こちらも思い詰めている顔です。


 長くなりそうなので、次回に続きます。

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