11 「マンガ」と「児童画」の間で②清水崑『ぼんやり山のぼんたろう』『まいごくじらとぼんたろう』

 前回の予告どおり、清水崑『ぼんやり山のぼんたろう』(1972)『まいごくじらとぼんたろう』(1973)をご紹介します。


 どちらも学研〈カラー絵ばなし〉です。


 で。学研〈カラー絵ばなし〉、執筆陣を見ると、当時の漫画の大御所が並んでいます。横山隆一、馬場のぼる、センバ太郎、手塚治虫、那須良輔、きくちさだお。

 ひょっとすると手塚治虫先生が一番お若いのではないでしょうか。手塚先生の絵柄だけ明らかに雰囲気が違います。


 清水崑先生は昔話の絵本も描かれていますが、漫画の代表作が「かっぱ天国」で、週刊誌連載の大人漫画ですね。昔の黄桜CMのアニメに出てくるかっぱも清水先生です。YouTubeで観られるみたいです。

 私の世代ですと黄桜は小島功先生の、さらにセクシーな(笑)かっぱでしたが、清水先生の、のんびりしたかっぱも楽しいです。


 さて、『ぼんやり山のぼんたろう』『まいごくじらとぼんたろう』、どちらも創作民話の絵物語です。


 一作目は、ぼんやり仙人のもとで育った、とても力持ちで体も頑丈なぼんたろうが修行の旅をして、その間に困り事を助けて活躍するお話です。大蛇や悪者と対面しますが、とても強いので、何があっても動揺せず、ずっととぼけた顔のままのぼんたろうが面白いです。


 二作目は、旅を続けるぼんたろうが、海で迷子の子どもくじらと友達になり、村のくじら狩りに追われていたお母さんくじらを助けるお話です。最後の和解場面で、人間もまた自然に対する約束を守りながら、生き物たちと生きていくという姿が描かれ、海の壮大さと生き物への愛情が絵からつたわってきます。


 どちらも最初から最後まできっちりコマで割られたものではなく、絵のついた読み物の部分と、ゆるやかにコマ割りされた、マンガっぽい部分でおはなしが展開されています。


 清水先生は黄桜でアニメの経験があるからなのか、マンガっぽい部分の絵の構図が動きを意識されていて、『まいごくじらとぼんたろう』の、ぼんたろうが子どもくじらと遊ぶ場面は躍動感があり、くじらが可愛いです。また、スピードをあらわす線など、マンガ的な記号の表現も取り入れられています。


 絵柄がちがうのであんまり気付きませんでしたが、おばけマンションシリーズや、おばけやさんシリーズ、かいけつゾロリシリーズのような、マンガと読み物の中間のような本の手法に通じますね。


 ということで、ご紹介でした。図書館などで見つけたら、とても楽しいのでごらんください。


 次回は、今回お名前が出てきた馬場のぼる先生の子どもマンガ作品をご紹介します。

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