第133話プライド
ロールプレイングゲームの世界以外で無価値だと文月は否定した。染子がアパアパにその装飾の帽子を被せ、SNSで紹介する妄想を説明し、知努は企みの全貌を暴く。
「どうせ世界的有名ブランド会社の目に留まって、ライセンス料で儲けられるとでも思ってんだろ?」
人間の身勝手な理由で角を奪われた、サイの頭骨を看板の前に展示しており、染子が周りの女子達から非難を浴びせられる。知努は頭骨を指差し、彼女に謝罪を要求した。
「見ろよこれ、なぁ! この無残な姿よぉ、なぁ!」
角がアジア圏で薬や装飾品と利用され、それを目的としている狩猟の影響でアジアのサイは激減してしまう。次にアフリカ大陸のサイが狙われ、法律で禁止されるも未だ密猟として続く。
その事に関する説明文を黙読し、忠清は染子の方を向き、睨み付けた。ユーディットがクーちゃんの毛皮を狙う場合、知努の逆鱗に触れると釘を刺す。
彼は両手を2回叩き、話題を打ち切る。約1ヶ月前、1人の少年が疑心暗鬼となり、子犬を連れ去った。その彼を知努は説得し、事態を収拾する。ユーディットの懸念が他人事で無い。
サバンナに関する看板を眺めながら進み、2つの長い角を生やした草食動物の展示の前で彼らは一旦停まる。根元が捻じっており、染子は菓子パンを連想した。
看板にエラルドという名称を紹介している。雌と子供で数十頭の群れを構成して過ごす。知努は染子に人間として誕生した事を祝福し、地遊館の袋へ回し蹴りされる。
中のぬいぐるみに危害を加えられ、秋菜は彼女の太腿を全力で殴り、彼の背後へ避難した。知努が夏織に報告する脅迫をしながらカワウソのぬいぐるみの上体を出す。
数分間観察し、シマウマの展示へ移動した。エラルドと変わらない体勢で地面の草を食べている。その様子を彼らが撮影し、特徴的な体毛の模様を眺めた。
しばらくし、京希は隣の秋菜に、2人目の兄を勧める。契約を結んだ場合、3人の女子が自動的に渡世の姉となってしまう。
秋菜は検討する旨を伝え、保留となった。しかし、虎視眈々と渡世の姉の座を狙う染子が、彼女の頭を叩き、勝手に断る。そして、ゴキブリの玩具を出して牽制した。
「秋菜は遼東半島か何か?」
調子付く彼女は嫌がられているにも拘らず、絹穂の所有権を主張しながら視線を彼女の胸に向く。看過出来なくなり、知努が無理やり染子の顔をシマウマの方へ動かす。
今度は華弥の印象を訊き、彼から酷評を引き出そうとする。知努がその意図を見抜きながらも、わざと短所を話す。過保護と過干渉の傾向を持ち、子供の精神的成長を阻害する親と同類だ。
飼育されていたシマウマは、職員達に管理されつつも、母親の庇護下から離れている。保護者が被保護者の所有権を放棄しなければならない道理を華弥が認めなかった。
「キーちゃんはともかく、どうしようも無い俺を必要としてくれる事に感謝しないとな」
染子は機嫌を悪くさせ、知努とクーちゃんへ対する暴言を吐く。排泄物でサッカーをしたり、ユーディットの下着を帽子にしているなど、クーちゃんが著しく貶められた。
次の展示に移動しようとする矢先、誰かからLIFEのメッセージを送られ、知努はスマートフォンを取り出す。ヨシエが
曖昧な返事をして、彼は群れから離れる小さな哺乳類を追う。首の長い草食動物が高い木に付いた葉を食べており、秋菜を足止めさせる。キリンをマスコットキャラクターにしていた、玩具量販店の名称で呼ぶ。
彼女は顔と角を詳しく見る為、近付きながら説教していた知努に肩車を頼んだ。無言でしゃがんで、秋菜を肩へ乗せる。彼女がキリンの視線をこちらへ向かさせようと、何度も呼び掛けた。
しかし、キリンから数メートル離れており、雑音としか認識されない。しばらくの間、食事の様子を観察し、彼の肩を降りる。次に秋菜の口調を真似て、ユーディットも肩車させようとした。
しわがれている声で老人の演技をして、彼は食事の準備を促す。拳を震わせながら胸の前に上げ、ユーディットが老婆を演じる。マイクロブラックホール生成器で彼の抹殺を目論む。
「チー消滅作戦しないでくれるかな?」
娘を甘やかす父親と文月に嘲笑されながら知努は肩車する。ユーディットのせいで、キリンの姿が見えなくなり、染子は知努の尻を何度も叩きながら抗議した。
知人女子の威圧に弱い彼の姿を見て、慧沙が詐欺被害の心配をする。京希は相手を選んで、知努が要求に応じていた事を主張し、彼の汚名返上を試みるも、情けない状況は変わらなかった。
通常より多少視線が高くなり、ユーディットはキリンの顔立ちを凝視する。嘴のような大きな口元に愛嬌を感じていた。食事量が多いキリンは観客の方を向かず、ただひたすらに木の葉を食べる。
地面へ彼女を降ろし、知努が体重の重さを漏らす。それを聞かれてしまい、懲罰として、次の展示でも肩車をしなければならなくなった。
サバンナや草食動物に関するいくつもの看板を黙読し、移動する。百獣の王と呼ばれていたライオン達は、藻が浮かぶ水辺を挟んだ陸地で休んでおり、その理由は傍の看板に書かれていた。
夜行性の彼らは狩りのしやすい早朝、夕方、夜以外、休息するようだ。京希がカナコとヨリコの習性と重ね合わせ、類似性を指摘した。ごく稀に白猫達は廊下で寝転がっており、死骸と見間違える。
ライオン達が群れで行動し、雌達は血縁者同士で構成した。看板の文章に、肩車中の知努が目を通していると、文月はライオン達の習性を3人に当てはめて騒ぐ。
雌達が親類同士で群れを作り、狩りや育児を協力し合う。一方、他のネコ科動物は単独行動すると書かれており、ライオンだけが特別のようだ。
「夏鈴姉に狩りを任せて、クズキとディーちゃんはサボってそうだな」
知羽が雌ライオンの場合、華弥達の群れに所属する。京希はその考えを話すと、絹穂が狩りに参加せず、兄ライオンばかり追う知羽の姿を危惧した。
夏鈴率いる群れは、外敵との防衛戦以外役に立たない
成長した子ライオンは親元から離れ、雄同士で小規模の群れを作る。その後、他の群れに所属した雄と戦わなければならない。群れの雄は不定期で入れ替わる為、百獣の王も競争社会を過ごす。
野生の理から解放された、雄ライオンの背中を眺めている知努のスマートフォンがまた通知音を鳴らす。今度は珍しく忠文がLIFEのメッセージを送っていた。彼のプロフィール画像は、女性平安貴族のような化粧を施している顔写真だ。
『痴漢ものAV隠していたのがバレたせいで、マミーの態度が冷たいよー! 今も赤いモップとカンガルーと一緒にテレビ観ているから寂しい!!』
知努とアパアパが不在の三中家は、深紅の体毛を持つぬいぐるみが台頭しており、
悔みの言葉を送り、彼が祇園の家へ行く事を検討し始める。京希は帰宅を勧め、未だ知羽が起床していない事も知らせた。
愛している人は近くて、遠い ギリゼ @girize
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