赤い実、どうぞ

@3nana3

第1話

 あかいみ、どうぞ

 

 お気に入りのお皿。

 鳥の絵のお皿。

 枝にとまって、赤い実をついばむ鳥のお皿。

 

「こらー、また、にんじん残してる。」

 ママ、だって私、にんじんきらい。

 すると、お皿の鳥が、ちらりと私を見たの。

「ふふ。全部食べられたら、アタシの赤い実、1つあげるよ。」

「本当に?」

「本当に本当。」

 私は

 私は、にんじん、全部食べた。ママは、うれしそうに、お皿、洗った。

 ママは、お皿の赤い実が、1つ、無くなったのには気づかなかった。

 

 

 

 テーブルのお皿には、もう、赤い実、ひとつもない。

 全部、私が食べたから。

 白いお皿、もう、鳥もいない。

 私を連れて、飛んだから。

 ママの涙が、ポトリと、白いお皿にこぼれるのが見えた。

 私は、空を飛んでいた。

 もう、ママの顔が思い出せなくなっている。

 きっと、そのうち、声も忘れるんだろう。

 

 私のお腹は、赤い実で満たされている。

 あとは、ただ、ただ、飛ぶだけだ。

 仲間達と、南へ。

 飛ぶぞ。

 氷の冬がくる前に。

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