旅人アランの冒険譚

@when1101

プロローグ

日も高くなりそろそろ昼飯時になる頃、ソダシーニ村という小さな村でターコイズグリーン色をした髪が特徴的なひとりの青年が雑草刈りに勤しんでいた

彼の名はアラン・ベッジ、この小さな村でのもう2人しかいない若者の片割れだ


「全く、あいつのおかげでこの村も食い繋いでいけてるがもう少し加減というものをだな」


そうぼやきながら彼は1人で他の畑に移ろうと腰を上げたところでポコンと頭に軽い衝撃を受ける。彼が衝撃を受けたところをかきながら振り返るとそこには銀色の長い髪を伸ばした少女が片方に手は腰に当てもう片方の手で木編みのバスケットを持ちながら前屈みになり彼の方を向いていた


「誰が脳筋よ、だいたい誰のおかげでこの小さい村で…」


「へいへい感謝してますよシェリル様」


そっぽを向きながら彼は誤魔化すようにふざけながらも本心を伝えるが


「また思ってもないことを」


彼女には微塵も伝わっていない

彼女の名はシェリル・ソダシーニ、この村の長の孫娘でアランにとっては幼馴染にあたる


「てかさ、本当に今更だけどよ」


「何よ、いきなり」


「お前のそれ、どうなってんだ?魔法の域を超えてるし春もこれからってのにもうここまで育つとか」


「本当に今更ねと言うより私の方が知りたいわよ、って何回このやりとりさせるの」


もう何回目になるかわからなくなるほど幼い頃からそれこそ物心ついた頃からやっているやりとりに彼女は呆れている。

彼らが話しているのは彼女が使う力のことで、彼女は祈るように植物の前で念じることで植物の成長を何倍も早く促進させ、豊かに実らせることができる、いつ出来る様になりどう言った原理なのかは彼女自身や村の住人にもわかっていない。魔法を使ってもこう言う風にはならないらしい。

そう言ったやりとりをしているとアランの方からグゥーと腹の根が鳴り、彼は先ほどからよい匂いがするバスケットを見つめる。そんな様子のアランに気づくと彼女はバスケットを差し出し


「ほら今日のお昼ご飯」


「おお、本当にありがたいお前の作る飯は美味しいからな」


そう言いながら彼がバスケットを受け取ろうとすると近くの茂みからガサゴソと音が鳴り彼らは思わず身構える。昼食の匂いに誘われて小動物が来たと言うのなら良いのだがここらには熊や猪もたまにやってくるため、アランは自衛のためにも雑草を狩るのに使っていた鎌を構える、すると茂みから


「ああ、ようやく、ようやく見つけた」


そんな声をアランたちが聴くと突風が吹き荒び木の葉が舞いアランたちの視界を遮る。

風が収まり舞った木の葉も地に落ち茂みの方を見ても何もいない、風に声を乗せ誰かが悪戯でもしたのだろうかとアランは思ったが


「うわっ、ちょっと、何するのよ」


シェリルの悲鳴が悲鳴を上げ、アランが振り返るとそこに彼女の姿は無く地面には大きな影があるだけ。空を見上げるとそこには見覚えのない黒い髪をした男とその男に担がれて抵抗しているシェリルの姿があった


「いや、何してんのシェリルそれにその人誰?」


「どう見ても拐われる最中よね!あとあなたが知らない人を私が知っているわけないのは分かりきってることでしょ」


方や地で空を見上げ、方や攫われの身にも関わらずいつも通りの2人に当の誘拐犯は困惑するばかり


「攫おうとしてる俺が言うのもなんだが貴様ら割と余裕あるな」


「お前何者で何が目的だ」


今までの雰囲気を払拭し睨みつけるアラン


「名乗る義理はないと言いたいところだがこちらの都合だけ押し通すのもおかしな話か、我が名は魔王クロウ・シュバルツ、目的はこの小娘だ」


クロウはそう名乗りあげるが


「いや待て魔王ってなんだ、それにシェリルを攫ったところで何の得しないぞ」


アランはそう返す


「否我らには必要だ、何より我らには時間がない。何そう案ずることはない悪いようにはせぬ、ではさらばだ」


それだけ言うとクロウはシェリルを担ぎながら呪文を唱える


「待てひ、いやシェリルを離せ」


「ちょっとアランあなた今私じゃなくて昼ご飯って言いかけなかった」


「いやそんなことはない」


「こっち見て言いなさい」


それを最後にクロウたちは空に消えていったが、アランと言えば


「あ、行っちゃった。まあアイツなら大丈夫だと思うけど、俺の昼飯どうすんの」


自分の昼飯について心配していた


「とりあえず親父と村長のところ行くか」


そう言って彼は自分の家に向かうのであった

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