エピローグ


 悲しくて。

 そして、ちょっぴり大人になった俺たち二人。


 最終になる電車の中で。

 かたんことん揺られていると。

 一通のメッセージを受け取った。



 そこに書かれていた五つの文字。

 あの地で最も幸せになる言葉。



 俺たちは、携帯から顔をあげて。

 不器用に微笑み合うと。


 急に電話の着信音が鳴ったから大慌て。


「は、はいもしもし?」

「電車ん中で出るな!」

『ああ、もしもし? いやはや、さっきはみっともないとこ見せちゃって悪かったわね?』

「い、いえ、みっともないなんてことは……」


 周りに座るお客さん。

 ほんの数名の視線が全て集まってくる。


 確かに悪いとは思うけど。

 秋乃は静かに話しているだろう?


 むしろ、愛さんの声の方が大きいくらい。

 だからそんな目で見るんじゃねえ。


 ……それにしてもでけえな、声。

 俺にも丸聞こえだよ。


『そんでさ! 迷惑かけついでに、もう一つ頼んでいい?』

「はい……」

『秋乃ちゃんの学校、私の母校だって話したわよね?』

「ええ」

『他のことに打ち込んで、パーっと忘れたいって話してたことも覚えてる?』


 秋乃が困り顔と携帯を俺に向けて来たんだが。

 ええと、たしかあれは……。


「小説だかなんだかを書こうって話でしたっけ」

『お? 少年の方! 覚えててくれて話が早い!』

「嫌なことを忘れたいってそういう意味だったんですね。……それで?」

『あんたたち、もうすぐ文化祭よね!』

「はあ」

『くーーーーーっ!!! きたきたきたぁ! 燃えて来たわ!』


 何の話か全く分からず。

 一人で盛り上がる愛さんの言葉を待っていると。


『じゃあ、明日……、は、さすがに無理か。明後日の放課後に行くから!』

「え? 来るって、学校に?」

『そうよ! 期待しててね! それじゃ明後日!』

「ちょっと! 何の話です? 説明を……」

『気にしない気にしない!』

「気にするわ! 不穏でしかない!」

『不穏なんてこと無い無い! グッドグッド!』

「ちょ、愛さん!? ……切りやがった」


 まるで嵐のような会話を終えた俺は。

 呆然としながら秋乃に携帯を返す。


 一体。

 なにが始まろうとしているんだ?





 秋乃は立哉を笑わせたい 第15.7笑


 おしまい♪


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秋乃は立哉を笑わせたい 第15.7笑 如月 仁成 @hitomi_aki

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