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カブトムシを
「
私が
彼は今、その足首を何かに捕まれている。その色や線の細さはまるで、あの
そうして観察する間も、みるみる有戸の引きずられる速度は上がる。彼はようやく事の重大さを理解したようで、
彼を引きずる何かの正体を
そうして私は直感する。
あれは枝じゃない、肢だ。
私の直感の証左とばかりに、
一対のギロリとした複眼。貝類のように無機質な口。周囲の草に
知っている。あれは、キリギリスだ!
*
とすると、枝から生えていたのは葉っぱではなく、キリギリスの前肢についていた
とすると、獲物を
私は全力で彼を、キリギリスを追った。もはや地面が木の根と
だがキリギリスは予想に反し、突然に動きを
「えっ……」
青ざめた顔で
いや、正しくは上空を駆けたのはない。ライトで
私は木までの開いた距離を
巨大なキリギリスも抵抗するのか、今度は有戸に
引き裂かれるような
さすがの巨大キリギリスといえども子供二人は
そしてたった一つ、よぎったこの
*
「
私は彼の体を離さないようにしつつ、彼が
手にしたのは、彼が用意してきた虫よけスプレーだ。
私は申し訳ないと思いつつ彼のリュックの中身をぶちまける
私が手を放したのを
私は天頂のスプレーボタンを思い切り
ギィィッッッーーー‼ と骨が
そのまま私はもう一本の左腕に
今度は明確に、ギャアァァッッッーーーー‼ と
黒々としたヤツの背中に、昼間私たちがナイフで
木の幹に
その存在は、そうとしか結論付けられなかった。
*
その後は
元々子供だけでいていい時刻ではない。私たちは山の管理者だというヒトに見つかり、
管理者が連絡したのか山に直接、有戸の両親が
その後は車で送ってくれるとのことで、ご
帰る間際、
「ありがとうな。そんで、ごめん。俺が
行きとあまりにも違う、全てを
そうなってほしくはない。有戸が虫について語る時の瞳の
「全然。だって生きてるじゃん、僕たち。それよりさ」
私は自転車を彼に近づけると、行き場を
「虫の研究、続けててよ。きっと有戸くんなら、世界中を
彼は呆気に取られた様子で、何度も
「元気でね。またいつか、虫捕りに
私は“楽しかった”の意を込めた笑顔を送り、自転車をこぎ出した。
待ってろよーー‼
風に乗って聞こえてきた
*
あの一夜から、もう20年も
夏の暑さは年々増して、もはや極小な虫も巨大な虫も
その後の
ただ昔は今よりも無茶をしていたから、ひょっとすると私の正体に薄々だが気付いたヒトはいたのかもしれない。例えば、“昆虫博士”の彼とか。
今はヒトのマンションに
二対目の腕の
仕事から帰って、
【日本昆虫研究施設】より「
どうやら私は研究施設とやらに案内されているらしい。室長の名前を見て、ふと20年前を思い出す。彼はあの夜、
やはり人間の
最近は角の
〈了〉
ミミクリーカブトムシ 私誰 待文 @Tsugomori3-0
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