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山の近くで
行きの道で水筒はほぼ
やがて、ピンクスカーフの
「いいか
有戸の忠告を
*
森の奥は、山道以上に暗かった。
もちろん、道中に
「有戸くんが見たカブトムシって、特徴とかあるの?」
体力の消耗を
「全長は
「やけに詳しいね」
「ちゃんと見た目をメモしたからな」
「そこまでちゃんと見れたなら捕まえればよかったのに」
「近づいた途端、
とうとう、昼時ナイフで
すでに陽は落ちたのだろうか、手持ちの電灯と布シートを照らすカンテラの光がなければ、辺りをしっかり視認できない。息を殺すと
まず、発酵バナナを
バナナの周りには、私たちのよく知っている色のカブトムシやクワガタムシが数匹、興味深そうに
念を入れて幹の裏や根っこに近い部分まで探したが、
「しょうがない。あと5つもあるし、
彼は
それから淡々と、仕掛けた
昆虫博士の名に恥じぬ実証結果だが、彼はそれでも満足する様子はなかった。自然と余裕もなくなり、口数も
そして最後の幹を調べ終えた時に、
「今日の分は、布を探して最後だ。まぁ採集は根気だ、そう簡単に見つかりっこないって、分かってたさ。
私に
最終ポイント。苦労して張った布シートの罠。そこへ向かう最中、彼が疲れ切った声色で話しかけてきた。
「もし、もし今日見つからなかったとして桐鍬は、今後も一緒に
どう返答しようか
「いいよ。その代わり、発酵バナナのレシピ、教えてよ」
だから私は、彼を支えてやることにした。昆虫博士だって、誰かに
「本当? お前も作ってきてくれるの?」
肯定すると、彼の潰されそうな表情が
暗闇の中、
「…………いない」
有戸の言葉が、全てだった。
*
より一層の沈黙が、私たちを
意識しない間に、小さな木漏れ日すら消えている。もう本当の夜が、街には
「帰るぞ」
重い絶望をどかして、
「次の日程、考えないとな」
そう笑う彼の
手元を電灯で照らしながらの作業。彼がシートを
しかし。
「?」
一瞬、視線の先。一本の
よく目を
何度も何度も、
葉っぱに見えるその部位は、
角と同じ色をした
私は向こうに見える存在を刺激しないよう、そっと背後にいた彼の
「どうした?」
思ったより声が大きかったので必死に指を彼の
彼は
*
呼吸が
私たちは一度だけ、
私は真っ直ぐな視線を意識しながら、
あれは、君が
その意図は通じたようで、次に視線を移した時にはもう、意を
一歩、また一歩。彼の念願が近づいてくる。
私は背後から
3メートル。
2メートル。
1メートル。
腕を伸ばせば
「はぁ……!」
緑のカブトムシを
それから聴こえたのは、彼の
ではなく。
「——えっ?」
〈続く〉
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