over extended.

 部屋の片隅ではない。ここは。彼女の部屋で。彼女のものに溢れている。


「あ。やべ。どこにやったっけ、あのパーツ」


 ちょっと待ってね。この前片付けたから。ええと。ほら。この戸棚の。ここ。


「あった。ありがとうございます。ほんとに。いつもいつも助かってます」


 いえいえ。


「新しいお部屋なのに、結局あなたに片付けてもらっちゃって。ほんとにわたし生活能力ないなあ」


 いいんだよそんなもんは。


「せめておんなとしての魅力あればなあ。お化粧とか色々。でも好きなんですよねおもちゃが」


 生きてればいいんですよ。俺の前からいなくならないで、目の前で楽しそうに生きてくれれば。それだけで。自分も生きていけるような、気がするから。


「ん」


 え。


「聞きましたよ」


 あっしまった。つい口を動かしてしまった。


「生きることに関しては、あなたの数倍たのしんでるので。まかせてください。ほら。おもちゃもたくさんあるし。いっしょにあそぼ?」


 部屋の片隅にいたような自分も。

 彼女のものになった。

 彼女となら。生きていける。生きていてもいい。なんとなく、そう思える。

 彼女の左手の、薬指。指環が、陽光を反射していた。

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部屋の片隅、君のもの 春嵐 @aiot3110

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